よんろくソング

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「ちょっと腕高くして…んで、左手で暫く圧迫しておいて。これ貼っとけばすぐ治るよ」 「どうも…で、誰?」 「寄居(よりい)成美(なるみ)、6組」 俺と同じ学年カラー(あお)の上履きを指差しながら君は答えた。 「…寄居さん、タオル汚れたんじゃない?」 「そう?……大丈夫だよ」 そう言って君はタオルを確認した後、広げて俺に見せてきた。 「助かった。血、止まんなかったから」 「気にしないで、私看護師志望だから」 「今度何かお礼するよ」 「え?いやいや、いいよそんな……あ」 「何?」 「友達になって欲しい、てのはダメ?」 「友達…俺と?」 「うん。私同中(おなちゅう)ほとんどいなくてさ、だから…」 「分かった、じゃ…今から友達って事で」 「やった‼︎よろしく、えっと…」 「篠崎奏平(そうへい)、5組。名前呼び捨てでいいよ」 「じ、じゃあ私も名前呼び捨てで…いいよ」 「あぁ、うん。よろしく成美」 「よろしく奏平」 高1の5月、君と俺は友達になった。 それから君を好きになるまでに、そんなに時間はかからなかった。
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