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これは、異国人種。だろうな。
薄茶の髪と、かろうじて黒に見える瞳。動きの一つ一つが、一流レストランのボーイのように丁寧。二十歳以上、二十五歳未満、といったところか。
「紅茶をいれたけど、コーヒーが良かったかな。コーヒーも出せますよ」
「あ、いえ。結構です」
「そう。そう言ってくれるといいなーと思っていました。では」
優しげな印象の、いい男。
どうぞ、と俺には手で促したものの、彼はカップを持ち上げようとはしない。
彼女が戻ってくるのを待っているつもりだろう。
そういう気持ちは、わかるように思った。
ぼくが寝転んでいたらしいソファは、ふわふわとクッションがきいた、そこそこの寝心地。
ともすれば眠りに引き戻されそうになるのをぐっとこらえて、ぼくは正しく座り直し、自分が使わせていただいていた毛布をたたむ。
その間、彼の視線に追われていることを感じてはいたが、不快ではなく、不思議に感じていた。ぼくはこんなに馴染みやすい人間ではないはずだ。
「……遅いな」
ぽそりと一言、彼がそうつぶやくとほぼ同時に、扉の向こうから声がした。
「エリクー」
「はいっ」
椅子をひっくり返しそうな勢いで立ち上がり、つかつかつかと大股で部屋を横切って、大きく扉を開け放つ。
「できあがりーっ」
「あぁ……、はい、ご苦労様」
重そうな大皿を彼女の手から取り上げると、彼は見るからにほっとして表情を和らげた。
そうだ――などと思う。心配なんだよな。一人でやらせなきゃいけないと思って命令をするんだけど。それも、よくわかる。
皿はテーブルの中央に(彼の手により)配置され、満足そうな笑顔でエリクは高らかに、
「さぁっ、では、お茶に致しましょーう」
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