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「あ、そうだ! ちょっと話の腰折っちゃって申し訳ありません。この前、ちょっと面白い話があったんですよ」
「やめてくれよ。どうせ怖い話でしょ? あんた好きだもんね」
相手は本気で望んでなさそうだった。
ここが工夫のしどころだった。僕としても嫌がる相手に語るのは本意ではないのだ。
「いやまあ……そりゃ気持ちの良い話じゃありませんよ。僕ですからね。でもただの怖い話ではない、はずです。なんですかね、郷愁を誘うっていうのかなあ。ちょっとした抒情みたいな風情もありますよ」
「へえ。抒情ねえ……」
あまり乗り気ではなさそうだが、関心は惹けたようだ。この人はその手の雰囲気に弱いのだ。
「じゃあ聞いてみますかね。ちょうど時間も空いてるし」
はいはい、と僕は身を乗り出す。
「ええ、でもまあ、いきなりこんなこと言うのもなんですけど、あまり期待はしないでくださいよ? 想像で埋めた部分もありますし、脚色もあります。なんせ僕ですんで……」
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