2.彼氏の裏切り

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「このまま梨乃さんとずっと一緒の部署で仕事したいな。もし結婚したら秘書室からは異動になっちゃうんですかね?」 「結婚したから異動になるっていうのは無いと思うよ。今ちょうど産休を取られている先輩秘書の藤原さんは結婚されても秘書の仕事をずっと続けられていたし。だけど産休後は秘書の仕事で戻って来られるのか、それとも他の部署で復職されるのか、その辺はわからない。おそらく人事の人と相談されるんじゃないかな?」 「そうだったんですね。藤原さんは私が本社に異動になる前に産休に入られていたからあまり知らなくて……。せっかく梨乃さんとも仲良くなれて、この仕事にも慣れてきたのに、異動になっちゃうのかなってすごく不安だったんです。あー良かった! これで安心した!」 もし結婚したら──という仮定の話かと思って聞いていたけれど、この川嶋さんの口ぶりだともしかしたら近々結婚する予定でもあるのだろうか? 私は哲也さんとの関係を秘密にしていることもあり、同僚には彼氏はいないと話している。自分のことは秘密にしておきながら他人のプライベートを聞くのは悪い気がして、今まで川嶋さんに対しても彼氏について尋ねたことはないけれど、今回はどうしても気になってしまい、思い切って尋ねてみた。 「もしかして川嶋さん、結婚の予定がある……とか?」 「そうなんです。結婚を前提に付き合っている彼氏がいまして……」 無邪気に何の躊躇もなく答えてくれたことに対して驚きつつも、仲の良い後輩からの嬉しいニュースに、私は胸の前で手を合わせて声を上げた。 「えっ、そうなの! わぁぁ、おめでとう! 全然知らなかった!」 「ありがとうございます!」 川嶋さんはとても幸せそうに微笑むと、さらに驚くことを口にした。
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