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「でも今日は梨乃さんに話せて良かった! あー、スッキリした! 」
川嶋さんは正直に打ち明けてくれたというのに、なんだか私は彼女を騙しているようで、哲也さんとの関係を秘密にしていることが心苦しくなってくる。
実は私の彼氏も社内の人なんだって川嶋さんにだけは話してもいいかな?
今度哲也さんに相談してみようかな。
そんなことを考えていると、テーブルの上に置いていたスマホを確認した川嶋さんが顔を上げた。
「梨乃さん、信頼している梨乃さんだけにはここでこっそり彼氏を教えちゃおっかなって思ってるんですけど」
「えっ、いいの? 誰と付き合っているのか教えてくれるの?」
既に半分ほど飲み干したカクテルを手に取り、口に運ぶ。
今日は美味しいお酒も飲めて、川嶋さんの幸せな話も聞けて、とてもいい気分だ。
「はい。このあと彼氏を紹介させてもらってもいいですか?」
その言葉に私は手に持っていたカクテルを落としそうになった。緩んでいた頬と身体が一瞬にして固まる。
「えっ? ちょっと待って。もしかして今から川嶋さんの彼氏がここに来るってこと?」
嬉しそうに頷く川嶋さんを目の前にして、全く予想もしていなかった展開に途端に心臓がバクバクと音を立て始める。
「ちょうど近くにいるって連絡が来たので、ここのバーに来てってメッセージ送っちゃいました」
急にそんなこと言われても、相手は同じ社内の人間だ。
私と顔を合わせるのは嫌なのではないだろうか。
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