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「えっと……、彼氏は同じ会社の私がここにいること知ってる? ……っていうかそうじゃなくて、私と顔を合わせるのって嫌なんじゃない?」
「大丈夫です。私が梨乃さんと仲がいいことはよく知ってますし」
ゆったりとした気分だったのが一転、落ち着きを失った私とは裏腹に、川嶋さんは彼氏が到着するのを心待ちにしているようだ。
どうしよう。めちゃくちゃ緊張するんだけど。
どんな顔して話をしたらいいの?
やっぱりここは会わずに今すぐ帰った方がいいかな?
っていうか、川嶋さんの彼氏っていったい誰なんだろう?
社内で川嶋さんと年齢的に合いそうな独身の男性を思い浮かべてみる。一番可能性が高いのは毎日顔を合わせている本社の男性だけれど、誰かいただろうか?
川嶋さんの彼氏に相応しそうな人物を考えていると、なんと驚くことにお店に入って来る哲也さんの姿が見えた。
えっ、哲也さん?
哲也さんがどうして?
こんな嬉しい偶然が起こるなんて──。
気づかれないように哲也さんの姿を目で追いつつ、にやけてしまいそうになる口元を必死で堪える。
どうやら哲也さんはここで誰かと待ち合わせでもしているのか、人を探しているようだ。
それにもうひとり、哲也さんのすぐ後ろには沢村課長の姿も見える。
もしかして他にも社内の人がこのお店の中にいるってこと?
照明が落とされているのではっきりとはわからないけれど、私もそれとなく周りを探してみる。すると突然川嶋さんが立ち上がり、ここに座っていると言わんばかりに二人に向けて笑顔で手を振った。
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