2.彼氏の裏切り

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「梨乃さんカクテルにされるんですか! やっぱり梨乃さんって女性らしいというか、チョイスが可愛いですよね」 身体の疲れから甘いカクテルを選んだだけなのに、川嶋さんは女性らしいと感じたようだ。勘違いされたことが恥ずかしくて、目の前で手を振りながら否定する。 「違う違う。可愛いとかじゃ全然なくて。普通ならビールにするところなんだけど、今日は朝からパーティーのことでずっと緊張してたせいか結構疲れを感じちゃって。だから甘いカクテルが飲みたかっただけ。それにこの雰囲気だとお洒落なカクテルの方が美味しく感じちゃいそうだし」 「もう、そこが女子なんですよ! 店内の雰囲気を見て選んでるってところが女子なんです! じゃあ私も今日はビールをやめてカクテルにしよっと。私はモヒートにする!」 お互いに飲みたいものが決まったところで店員さんを呼んでカクテル名を伝える。そしてオーダーを終え、パタンとメニューを閉じた川嶋さんが大きな溜息を吐いた。 「はぁー。ほんと疲れましたよね。社内のパーティーと言っても役職者ばかりだから結構気を遣うし。それにこんな時間まで働いたっていうのに明日も仕事だし」 「そうだよね。とりあえずパーティーが無事に終わってほっとしたけど、明日が仕事っていうのが一番辛いかも……」 川嶋さんの話にうんうんと頷きながら明日の社長のスケジュールを頭の中で思い出す。 明日の午前中は何も予定が入ってなかったよね? だから社長はデスクで事務処理をされるはず。 それと午後からは会議がひとつあったけど、あの会議は確か春の人事に向けての役員と人事部長を交えた会議だったから、午後も社内にいらっしゃるし、明日は業務後の会食もなかったはず……。 一日中社内ワークだということは、特に気をつけておくスケジュールは今のところ無いだろう。ということは、私も明日は少しゆっくりと業務ができそうだ。 気持ちの中に少し余裕ができてほっとしていると、注文していたカクテルが運ばれてきた。
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