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「わっ、美味しそう!」
淡いピンク色をしたロンググラスを見て思わず声を漏らすと、カクテルを運んできた男性がにっこりと微笑んでくれた。グラスの縁には真っ赤に染まった苺とみずみずしいパイナップルが飾られていて、華やかな彩りが店内のお洒落な雰囲気にぴったりだ。そして川嶋さんの前にはミントとライムが入ったしゅわしゅわのモヒートが置かれた。
さっそく川嶋さんとカチーンとグラスを合わせ、お疲れさま──とカクテルを口に運ぶ。
疲れた身体に甘くて爽やかなカクテルが染みわたっていき、私は目の前で優雅に泳いでいる水槽の中の熱帯魚に癒されながら幸せな気分に浸っていた。
「やっぱり仕事が終わったあとのお酒は美味しいですよね!」
「ほんと! 特に今日は朝からパーティーのことで落ち着かなかったせいか、いつもよりも一段と美味しく感じちゃう。それにこのお店、すっごく素敵だし」
哲也さんと会えなかったのは残念だったけれど、川嶋さんが誘ってくれたことで、こんな非日常的なお洒落なお店を知ることができたのは本当によかった。店内は照明が落とされているのではっきりとはわからないけれど、デートをしているカップルも多いような気がする。
今度は私も哲也さんと一緒に来てみたいな。
この大きな水槽を見たら、きっと哲也さんもびっくりするよね?
驚いた顔の哲也さんを想像するだけで自然と口元が緩み、幸せな気持ちに包まれてしまう。
「やっぱり梨乃さんもこういう雰囲気のお店、好きですよね? そうじゃないかなって思ったんです」
「うん、すごく好き! こんな大きな水槽があるお店なんて初めて来たもん。川嶋さん、こんな素敵なバーに誘ってくれてありがとう。これで明日も仕事が頑張れそう!」
「梨乃さんが喜んでくれてよかった! 私、梨乃さんにはほんとに感謝してるんです」
感謝──?と首を傾けると、川嶋さんはニコッと笑って大きく頷いた。
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