どうやら自殺(自滅)したようなので、死に戻ったなら王太子と婚約破棄したい

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   *  一年以内に婚約破棄をする予定が、全く上手く進んでいなかった。なぜならシェンブルとは毎日食事するほど仲がいいし、むしろ話が上手で感心するくらいだし、カテリーナが邪魔をしに来ることもなかったからだ。  エレンは不思議でしょうがない。自分が死んだのは夢だったのかと。婚約破棄なんかしなくてもこのまま問題なく過ごせるのではないかと思うくらいだった。  アリーと初めて出会ったように、この世界ではカテリーナに出会わないという可能性もある。もしかしたら存在さえしていない可能性も……確認する必要があると思った。 「……そういえば、カテリーナ様はお元気でしょうか」  一か八か、いきなりカテリーナの話題を振ってみるエレン。 「ああ、カテリーナ嬢は元気だと思うよ。一時期は家族から、王子妃にとかなり勧められたけれど、私がエレンにしか興味がないとわかるとそういうこともなくなったしね」  やはりカテリーナは存在している。立場も変わっていない。ということは、今このときもカテリーナは王子妃の座を狙っているかもしれない。  というか、さらっと自分にしか興味ないって言った?それが本当ならますますおかしなことになる。カテリーナは?カテリーナを王太子妃に迎えたいはずでは?エレンの頭の中はますますこんがらがるばかりだった。  確認しようにもカテリーナに会えないのだからどうしようもない。  それにしてもエレンの前に現れないのはなぜだろうか。それが本当にわからなかった。 「ところで……」 「何でしょう?」 「いつからアロとあんなに仲良くなったんだ?」 「アロ?第二王子アロ様でございますか?」  シェンブルは気まずそうに頷いた。エレンは言われている意味がわからず、首を傾げる。 「アロ様はご病気でほとんど外出なされないはずでは?」 「本当は病気ではないんだ。王位継承を放棄したいらしいが、そう上手くはいかなくてね。取り巻きの騒がしさがイヤになって引きこもっているという感じかな」  初耳だった。 「では外を歩くこともあると?」 「ああ。この前、図書館裏で君と談笑している姿を見たよ」   図書館裏……まさか、あのアリーが? 「アリー……様のことでしょうか」 「アリーと呼んでいるのか?アロの愛称だな」 「そうなんですね。存じ上げませんでした」 「その、もしかして……アロのことが好きなのか?」  気まずそうに尋ねるシェンブル。それはそうだろう。婚約者にそんなことを尋ねたくないはずだ。 「お友達ですよ。話が合うんです」 「なるほど。アロと仲良くしてくれるのは全然かまわない。ただ、君は私の婚約者であって……」 「もちろん、わきまえております」  ん、これはもしかして、アリーを理由に婚約破棄できるのではないだろうか、エレンは画策し始めていた。妙案が浮かんだエレンは、そっちの方向へもっていけないか真剣に考え始めた。 「政略結婚であるから、私のことが好きでなくてもかまわない。嫌われていなければいいだけだし、きちんと公務をこなしてくれれば、婚約者として王子妃として問題ない。もし君がアロを好きだといっても、その、不貞さえなければ……問題はない」  少し悲しそうな憂い帯びた表情ではあったが、嘘を言っているようには見えなかった。  他の男を好きな女と結婚など問題あるだろう、と思うものの、その言葉の端々からエレンと婚約破棄する気がないという思いが伝わってきた。  ダメだ。なぜかわからないが死に戻ってからというものシェンブルの好意しか感じられない。どうしてこんなに好かれているのか、心当たりがなかった。  それに比べてエレンのシェンブルに対する思いは、無に等しい。可もなく不可もないという、死ぬ前よりも薄っぺらい感情になっていた。  婚約破棄については、練り直さなければならいけなくなった。
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