追憶のアニス

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追憶のアニス

  警察庁祓魔課の歌姫 リアルぷいきゃーと悲しみの妖精王編新装版  ブラッドフォードの夏は、瞬く間に過ぎていく。  当時、15歳になったばかりのライル・グリフィス・コティングリーは、夏の北海道を思い起こさせるような、暑さと涼しさを同時に感じていた。 「ライル。そろそろ、時間ね?」  背後からそう言われた。 「ああ。済まねえな。アニス。魔女は、15になったら追放されるって決まりだ」 「一方的に、魔女だの何だのと、決めつけて、一歩も出られなくして、時間が来たら、失せろというのね?妖精王って、大嫌い」  拗ねたように、アニスは言った。 「仕方ねえだろうだろうが。俺が決めたルールじゃねえよ。ただまあ、出たけりゃあ好きに出てけってルールも、決めねえとな?」 「何だって、好きに出来るんでしょう?ライル。だって、貴方は妖精王だもの」  殆ど、呪いだ。これは。  座った椅子に立てかけた、美しい鞘の細工。ヒルトの大きなルビー。  1度抜けば、妖精は無事では済まない魔剣。それが、カリバーンだった。  そのルビーが光り輝き、ライルは、一瞬で草原の一軒家に出現していた。 「ソフィーが、住んでいた家?まだあったんだ」 「色々あったが、ソフィーがお袋って事実は変わらねえからな」  ソフィー。アニスは呟いた。  彼女から、多くのことを学んだ。多分、アニスにとっても、彼女は母親のような人だった。 「アニス。お前」 「大丈夫だって。親の役目をしてくれる魔女もいるもの」  ふわり、と、アニスの亜麻色の髪が香った。  椅子に座ったライルを、バックハグで包み込んだのだった。 「今まで、ありがとう。――ライル」  アニスのいい香りを感じ、ライルは。  彼女を抱いて、ベッドに倒れ込んでいた。  それは、あれから何年も経った、追憶と、悲しみの物語。  王を愛してしまった魔女。許されざるその思いが、どういう結末を迎えるのか、  誰も、知る者はいなかった。
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