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親娘
2022年、舞台は東京渋谷の道玄坂。
引っ越しのバタバタもようやく落ち着きを見せ、家主の勘解由小路降魔は、ダラダラと車に乗り込んで、放置していた作業をしていたという。
ガレージ内は地獄の暑さだったが、リムジンの中は恐ろしく快適だった。
「パパ。暑くないのよさ?」
後部のドアが開いて、愛娘の莉里(6歳)が乗り込んできた。
「ああ。莉里おはよう。クティーラと家の探検は?もう終わったのか?」
「うん!パパの物置のレコードたくさん発見したのよさ!カントリージョー・アンド・ザ・チップスって、何?」
「ザ・フィッシュだ。可愛い莉里。チップスじゃ美味しい間食になっちゃうだろうに。まあ、あの辺はだな、父ちゃんが中高時代に集めたもんだ。今はほぼ聴かんが。H・P・ラブクラフトなんか、結構いいと思うぞ?白い船とか」
「まあ、莉里は、パパが好きな曲は莉理も好きなのよさ。あ。何か、水没した女の人の生首みたいなレコードもあったのよさ」
「それは、親父の昔のコレクションだろう。オリビア・ニュートン・ジョンなんか、全く聴かずに育ったからなあ。ポールモーリアも同じく。ガキの頃はジャズ一辺倒だったし」
「今度、貸してくれんのよさ?まあ、ぷいきゃーの練習も兼ねて」
あー。ぷいきゃーなー。
「ああ、今度、莉里」
「それより、何してるのよさ?今」
「お、ああ今、買ったはいいが、それで放置してたCDをだな?ステレオにダウンロードしているところだ。母ちゃんが買ったアルバムがわんさかあった。カロッツェリアのステレオは、ちと古いが中々でな?ただ問題があって、取り込むのに結構時間がかかるんだ。だからまあ、こうして昼間から、ワイン飲みながら作業しているんだ。勿論、取り込んだCDには、ぷいきゃーもあるぞ?あれだ、クティーラのコーラスは結構いいな?ただやりすぎると、大きいお友達が海にドボンしそうだ。静かになったあと、残されたのは泡沫漂う白波だけってあれに」
「うん。気を付けるよう、クティーラに言っとくのさ。ああパパいい匂いするのよさ。莉里、クラクラしちゃうのよさ♡」
俺達の娘がなあ。俺に懐いて車まで。
ハッキリ言って、自分の頃とは違いすぎる。
でもまあ、幸せだ。
莉里を膝の上に乗せて、親娘のひと時を過ごそうと決めた。
「でも、お前も大きくなったなあ。もう片腕で抱き上げられんなあ。ごめんな?」
「全然構わんのよさ。要するに、莉里のおっぱいとお尻に肉がついてきたってことなのよさ。パパと莉里のXデーも間近なのよさ!ママには渡さんのよさ!ああそれで、こないだ陰態に行ったのよさ?それで、中学に上がってた莉里のパンツは何故か、物凄い人気だったのよさ。パパ要る?」
あああ。幼稚園児がパンツ盗撮される不快感を知らないのは、幸せというか何というか。
「父ちゃんを篭絡しようとするなよ。この厄介な園児が。なあ莉里、変身て、出来るか?」
ええ?でも、パパが望むなら。
莉里は、たちまち銀毛九尾の狐モードに変身した。
気恥ずかしそうに父親を見つめながら、銀色の尻尾がゆらゆらしている。
莉里の前髪を指で弄び、額を出して、父親は言った。
「望んだようにその身を変容させる。狐の幻術というより、やっぱり。いや、いいや、俺の可愛い夢魔っ娘」
やっぱり、真琴の遺伝だなあ。勘解由小路はそう思った。
「あ、おっぱい忘れてたのよさ。うっかりポロリして、パパがボッキンてなる予定が」
「だから、いいってそれは。父ちゃんと母ちゃんの仲を引き裂かんでくれ。ん」
あんまり可愛いので、額にキスしたら、莉里が、
「あ、ああ。パパ。ふわあああ」
莉里のお漏らしがあった。
「パパ。ごめんなのよさ」
「うん仕方ない。父ちゃんは気にせんぞ?」
莉里を、力いっぱい抱きしめた。
「ああパパ♡大好きなのよさ♡」
「ああ。父ちゃんも大好きだ。ああそういえば、なあ莉里。今ぷいきゃーの声当てとテーマだけだろう?もうちょっと、本格的に芸能デビューするとか、興味ないのか?」
「うみゅ?まあ莉里よく解らんけど、パパが嬉しいなら、頑張るのよさ」
「ありがとな?莉里。次の曲にぷいきゃーかけたいが、ああ、真琴のアルバムがまだ終わらんなあ」
エゴラッピンのベストアルバムを取り込んでいた。
色彩のブルースに合わせて、父親の胸の中で、莉里は幸福をかみしめていた。
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