トラウマ妖精王

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トラウマ妖精王

 俺は、俺はクズだ。  寮の一室で、膝を抱えたライルは呟いた。  今までやってきた女の遍歴をまあ並べてみた。  ババア、ラブカ、ババア、カエル。まあ酷い目に遭った。  挙げ句、カエルの卵塗れでトイレで発見された。  それ以来、師匠の家族の見る目が冷たかった。  ああ、トイレ前でばったり会ったガキなんか、 「あああ。何か、うちのトイレ使用禁止になっちゃった。どけ。排泄物」  とか言われてケツ蹴っ飛ばしてやりたかった。  何故だ?何故俺が、こんな目に遭わなきゃならんのだ?  やっぱり、あいつに呪われてんのか?  そうだろう!何か!呪い受けてたぞアステリアの馬鹿に!  でもまあ、呪いを解除する方法すら見えない。  あいつだって、一応妖精神だし。あの引きこもり女。  どうする?どうするどうする?  気が付けばライルはガタガタ震えていた。  俺は、金髪のイケメンで、カリバーンの保有者だ。  俺が来れば、ミルフなんか選び放題だと思ってた。  なのに、あの野郎に面白おかしく操られ、結局ババアだし。  ポッキリ折られたプライド。その魂は、青山墓地を今も飛ぶんですよその辺を。  膝がガクガク歯はガタガタ。お腹も痛い。キューンってなって。  今日の気温は38度を越えていた。  その時、音もなく扉が開いた。 「ああ全く、酷い暑さだ」  妙に、縦長のシルエットだった。  色白で顎髭を生やした、ファッショナブルなスーツ姿の短髪の男が立っていた。  そして、日本人ではなかった。 「何とも情けないお姿ですな。貴方は、妖精社会の君臨者であらせられるのに」  相手が人間やミルフならともかく、男、しかも妖精とあれば話は違っていた。 「お前は――フォーンだな?何しに来やがった。大体、フォーンならはどうした?奉行の奴も」  ライルは、実にけったいなことを言っていた。 「ええ。私はレイモンド・フォーニック。まあロンドン育ちですので。訛はございません。勿論、大明神を拝むようなこともございません。奉行?そんな者は私とは関係がありませんな」  フォーニックは、実にけったいな返答をしていた。 「そうか。妖精が寄って集って俺を叩きに来たんだな?ドーバーの水も冷たかろうな」  はあ。フォーニックは深いため息を吐いた。 「その、妙なトラウマは何です?貴方は、あの魔剣にまつわる、世界の滅びを救ったのですよ?奉行だけではない。貴方、双頭の妖精王なのですよ?」 「うるせえよ。なら、ミルフの4人か5人でも連れてこい。どうせ、妖精王ったって、日本じゃ俺はその程度の存在だ。日本にアフリカ辺りの部族長がいて、誰が気にすんだ?」 「ああ。解りましたよ。貴方の劣等感の本質が。でも、その部族がダイアモンド鉱山を所有していたらどうです?そのカリバーンの輝きを、発揮する時が来たのです。正しい権威は貴方の手にある。日本で、貴方が輝く場所を用意しましょう。だば」  結局訛ってんじゃねえか。あいつ、元気かな?  よく解らないことを、ライルは考えていた。
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