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宣材映像
東京湾沿いの漁港の事務所一室に、リアルぷいきゃーの2人は座っていた。
「莉里よ。妾は何をするか?ぷいきゃーになるのではないか?」
「違うのよさクティーラ。こりゃあ宣材なのよさ。要するに、莉里達が可愛ければいいのよさ。そうなのよさ?県」
見つめられた県聡美は、無言で頷いた。
たかが宣材映像を撮るのに、マネージャーがつきっきりになっている。
確かに、リアルぷいきゃーの2人は、稲荷山グループの秘蔵っ子なのは間違いなかった。
「じゃあ早速行きまーす。まずは、こっちの子から」
インタビュアーに言われて、クティーラはうきゅ?ってした顔をした。
ああ可愛いわ。県は成功を疑わなかった。
「妾か?深海の姫、クティーラじゃ。水難封じなら、妾に任せよ」
「どうもー。設定ブレないのは流石ですねー。じゃあ次は」
「あん?莉里か?莉里は勘解由小路家待望の姫様なのよさ。稲荷山幼稚園たんぽぽ組を皮切りに、いずれ極めてマルチまがい的に、世界を手中に収めるのよさ」
「――えええ」
インタビュアーも困っていた。
どうしよう。県も困っていた。
年長さん的に、マルチまがい的な発言はどうなのか。
「そもそものう。これで妾等の可愛さが、伝わるのかや?」
「まあ、その為の漁港での撮影なのよさ。クティーラなら簡単なのよさ」
「そうかや?こうであるか?」
クティーラが指を鳴らし、漁港が震撼していた。
漁港周辺1キロに渡って、海が海洋生物で埋め尽くされていた。
事務所の窓にぶつかった、タイ、チヌ、シイラ。
その中には、ダツが一匹紛れ込んでいて、窓に突き刺さっていた。
「おぎゃああああああああああ?!」
インタビューが、腰を抜かしていた。
「あああ。クティーラの声に抵触されて、こっちも降りてきたのよさ。ってああ、いつの間に車に乗り込んできたのよさ?こいつは莉里の手下、川峰さんなのよさ」
「莉里様ああああああああ!某は!某はああああああああああ!うむ?ニホンカワウソの川峰である」
挨拶したのは、超有名な絶滅種だった。
「ほれ、インタビュアーなる人間よ。ちゃっちゃと問うがよい。ああちなみに、莉里様のお履きあそばれるパンツの件は、完全部外秘にて」
「川峰さん、ちょっと黙るのよさ。って、ああ」
身の丈3メートに達する巨大な影が、咆哮した。
「莉里様ああああああああ!ラブリいいいいいいいいいいいいいいい!!可愛いよ莉里様ああああああああ!!」
「ああこいつは、積丹半島で拾った、赤帽子ガウガウくんなのよさ。全国制覇を目論んで、井中の哀れなカエルは大海を知り、莉里の走狗と成り果てたのよさ」
その時、窓をぶち破って事務所に入ってきた魚類が、
「ク――クティーラ様――万歳――ぐふ」
そこで、エラ呼吸のハコフグは、力尽きていた。
「――で?莉里に何聞きたいのよさ?」
ふてぶてしい幼児が2人いて、インタビュアーはほぼ気絶した状態で、
県は、カッチカッチになっていた。
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