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もうお店の中はガラガラになっていて、店員さんが「メニュー交換させていただきます」とモーニングのメニューとグランドメニューを交換していった。
何か食べるつもりなのか、玲奈はモーニングメニューを開いた。
「……七年、長かったなぁ」
メニューを開いたまま玲奈が言った。
オーディション合格から七年、デビューから六年、あっという間だったけれど、こうやって語りあっていると一晩じゃ足りないぐらいいろんなことがあった。十代後半から生活のほとんどをこのグループに注ぎ込んできた。それは、夏葉も玲奈も同じだろう。
そんな大切なグループが終わるきっかけ、表向きは新たな方向性とは言うけれど、私が原因なんだと思っている。
「迷惑かけて、ごめんね」
もう何度も謝ったけれど、改めて私は前に座る二人に頭を下げた。
「もし、私がこの記憶を持ったままで、七年前に戻ることができてもね」
玲奈が口を開く。「え?」と戸惑う私に微笑みを浮かべたまま、
「また、三人でデビューすることを選ぶよ、私は」
「え、ウチもそうだし」
「割り込むなー」
「もし、七年後に再会して二人とも暇そうだったらまた誘うし。再結成しない?って」
「夏葉はアメリカにいるんでしょーが」
「待って。私、アメリカに行ったら帰国しちゃダメなん?」
「何も得ずに帰ってこられるとメジャー挑戦失敗の野球選手みたいだからなぁ。あっちで一旗あげるまで帰ってこないほうがいいんじゃん? 私と夕音で再デビューするから。えーっと、Hite-Inkでよいかな?」
「『Reen』外すなし」
「だったらアメリカで成功してきたらいいでしょ。そしたら入れてあげるし」
「ウチの成功ありきなら、そしたら全米で再結成でいいやん。『Reen-Ink』で」
「なんで私を呼ばないのよ」
「ちょっと二人とも落ち着いて」
そう言いながら、思わず私も笑っていた。
どちらがか何かを言うと、どちらかが乗っかり、話が盛り上がったかと思うと揉め出す。そんな頃に私が止めに入る。
私たちはこの繰り返しだ。
これからもずっとこうしていたい。
そのためには――、
「また、三人で集まろうね。私、二人に負けないように頑張る」
夏葉のダンス留学、玲奈の舞台女優のような目標は私はまだないけれど、私ももっと成長できたら、こうやって三人でまた語り合えるような気がした。
「夕音が前を向いてくれたらなら、意味のある夜だったね」
「ウチらが三人とも成長したら、もっとすごいことできる日くるかもね」
この日、私たちは十代の頃に戻ったみたいに飽きることもなく話した。
でも十代の頃のように、無敵のカラダではない私たちは徹夜に目も肌も耐えきることはできず、すっかり眠くなってきて、それぞれの家に帰ることにした。
もうすっかり朝になった頃、私たちは三人でファミレスを出た。
ひんやりとした冷たい朝の空気の中で、いつものように離れた。
「じゃあね」
解散を発表した夜はこうして過ぎていった。
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