四_side.R_アナタノエガオ

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四_side.R_アナタノエガオ

俺は獣人だ。 そのことで苦労したことも困ったこともないが、鏡でこの耳と尻尾を見るたびに、他の人と違うのだと漠然と考える。見た目以外で違うところと言えば身体能力だ。獣人は身体能力に長けていて、学力に長けている者は少ないことが特徴である。しかし俺は人間と比べれば身体能力は高いが、獣人の中では低い。どちらかというと学力に長けているが、そうは言っても人間の中の上程度であった。 獣人であることよりも、中途半端な自身が許せなかった。獣人にも人間にもどちらにも属せていないと、勝手に孤独感感じてしまう。それすらも嫌で、自身を見ないふりで過ごした。 そんな俺だが運動ができないので、獣人でありながら人間の普通高校へ入学した。普通高校はそれなりに楽しかった。友人とは広く浅く付き合い、学習はほどほどに行い、中の中をキープした。それでもなお満たされない心の隙間が、自身を押しつぶし続けた。 そんな俺に転機が訪れたのは、高校二年生の夏だった。
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