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三_スキ
「みなみさんは中学生かな?」
「はい。」
情報を集めていることをたいてい知らないので、あえて確認を取る。ここから経験と感で、彼女の心に踏み入っていく。
「好きな教科はある?」
「国語です。」
「本を読むんだよね。図書館を見て回る?」
嬉しそうに頷く彼女を手招きし書庫部屋を回る。ルークは作業部屋にいるようで見当たらず、彼女もリラックスしたまま過ごせているようだ。目を輝かせて部屋を見て回る彼女といくつもの会話を重ねる。
一通り本を見終わったので休憩を兼ねて応接間に戻ると、温かな紅茶が置かれていた。どうやらルークが入れてくれたらしいそれを見て、今度は二人で目をぱちくりさせる。
「これも魔法、ですか?」
「もふもふの彼のね。」
イタズラっぽく笑えば、少女もクスリと笑みを浮かべた。
気を取り直して再び質問を進める。
「尊敬する人はいる?」
書庫部屋を回っている時に分かったことがある。それは彼女が個人を大切にしていることだ。彼女は著者にとても気を使って本を見ているようだった。一般的に流通している本のみ、流通している範囲で著者情報を公開しているが、それにも興味津々のようだった。試しに色々な著者について話してみた際には、熱心に耳を傾けていた。
「星の丘っていう本を書いた人です。その、国語の先生で。」
恥ずかしそうにしながらも、今までと違い一瞬どこか表情を陰らした。掴んだと感じた直感を信じて、負担を減らすためにひとまずは“星の丘”について時間をかけて掘り下げていく方針に決める。
できる助手が紅茶と共にテーブルへ置いてくれたらしいネガイノ書は、本に選ばれた際にその本の部分が光る。それが貸出の合図となるが、まだ光る様子はない。まだ彼女に必要な本が分かるほど、ピースが足らないことの現れである。
場をつなぎながら、ルークに“星の丘”の資料手続きをお願いする。資料として使用したことをデータに記録するため行う手続きだ。データ処理を手慣れている彼によって、かなり早く到着した“星の丘”は彼女に差し出される。彼はお礼を告げる僕を一瞥して、無言で本とは違う紙束を置くと去っていく。よく見るとその紙束は“星の丘”についてのデータだった。
「使うでしょ。」
と表情一つ変えずに言い放つ彼が想像つく。業務が終わったら片付けでも手伝おうと心に決めて、彼女との話に集中し直した。
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