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家なき子
あの後も少し言われた。きっと今まで言いたくてもガマンしてた事なんだろう。
私は、ただシンタローと一緒にいられるだけで幸せだったけど、シンタローは違かった、それだけの話。
私は、いつかシンタローのお嫁さんになるのが夢だったけど、シンタローにしたら、そんなのは夢じゃないって話。
「同じ職場のハナと同い歳の女の人達は、そんな甘い夢持ってる人いないよ?」
「みんな仕事バリバリしてて、生きがいとか、やりがいを持ってる。ハナにはある?」
矢継ぎ早にシンタローの職場の人達と比べられた。
知らないよ…そんな世界。
ないよ、そんなモノ。
「ハナと一緒にいるとイライラすんだよ」
「俺は、仕事で向上できる相手と一緒にいたい」
「ハナといると、ダメになる」
情けない事に、何も言い返せなかった。
好きな人に、ここまで言わせたのは紛れもなく私。
何も持ってない、私だ。
私は黙って荷物を手に取り、鍵を下駄箱の上に置いてシンタローに背中を向けた。
地元になんて帰れない。
だって、みんなに理由を聞かれる、ウソを言った所でシンタローと別れた事はバレちゃう。
町のみんなは、きっと優しく迎えてくれる。だって、そういう町だから。
でも、そんなの惨めすぎて耐えられない。
なにより…地元にはシンタローとの想い出がありすぎて辛い。
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