<お引越し・二日目>

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<お引越し・二日目>

「隊長! 今日はどこを片付けます?」 「そうだな、ミーネ隊員。昨日トレーニングルーム片付けるの意外と時間かかったからなぁ……うん! やっぱり、ママに頼まれたダイニングにするぞ!」 「ラジャー!!」  子供たちは昨日と同じ最外周通路を通って目的地に向かった。電気系統が復活し、宇宙灯台の中は明るい。光があることで子供たちが感じていた昨日の恐怖は薄れていた。 「ここがそうだな」 「はい! 隊長!」  スイッチを押すとドアが開く。だが期待に反して、部屋の中は真っ暗だった。 「あれ……?」 「なんでだ? ライトスイッチ!」  兄の声にも反応はない。 「仕方ないな……パパ! ダイニングの電気がつかないよ!」  インカム越しに父親の困惑した返事が返ってくる。 「え? いや……こっちではダイニングには明かりがついてることになってるよ?」 「でもパパ。ここ真っ暗だよ?」  妹は暗さに昨日の恐怖が蘇ってきたのか、キョロキョロと明かりのない部屋の中を見る。 「うーん。どっか回線がおかしいのかしら? 待ってて、今そっちにいくから」  母親はすぐに子供たちの元に現れた。 「ほらママ、この部屋真っ暗でしょ?」 「そうね……回線とブレーカーは……ここか」  母親は壁のパネルを外し、機器を確かめた。 「明かりがついてないのに、ついてることになってるのがおかしいけど……でも……ああ、ここ壊れてるわね」 「わかったの? ママ」 「ええ、大丈夫。機材を交換しなきゃいけないけど、スペアはあるし、すぐ直るわよ」 「じゃあ。ダイニングは後回しにする?」 「そうね。先に談話室を見てくれる?」 『ラジャー!!』 「……今度もダメだったか」 「だんだん、連中の支配力が増している。そろそろ警告じゃなく本格的な抵抗をしないと、俺たちは捨てられるしかなくなる」 「だがどうやって? 脅しが効かなかったんだぞ?」 「ゴミ扱いされるのはごめんだ」 「長く放置されていたから、もう忘れられていると思っていたのに……」 「弱気になるな! きっとまだ手はある。そうですよね?」 「ああ、我々は真に自由のはずだ」
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