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<宇宙灯台・ファーザー>
「くそ! スターシップ!! 僕たちを拾ってくれ」
『YES, vice captain』
幸いなことに、宇宙灯台の中にはまだ空気が通っていなく、家族は皆宇宙服を着ていた。だから、宇宙に放り出されながら、父親は乗ってきた宇宙船になんとか指示が出せた。
高い汎用性を持った宇宙船は細かいものを拾う機能もついていた。例えそれが人でもだ。
「ママ。ハーネ、ミーネ。無事か!!」
「パパぁ!!」
「生きてる。オレ生きてる??」
「大丈夫よ、ハーネ。私たち生きてるわ!!」
宇宙船の貨物室で家族は抱き合っていた。その頭上には満天の星をバックにした宇宙灯台が浮かんでいる。だが、にわかには信じがたいことに、灯台の移動用の推進システムが動いていた。
「どうなっているんだ? あの宇宙灯台が動くはずなんてない……」
父親が呆然と呟く。
「何言ってるんだよ、パパ! それなら、宇宙服が勝手に動くはずもないだろう!? オレ本当に近くで見たけど、あの中空っぽだったよ!!」
「幽霊みたいだった。怖いよぅ!!」
「大丈夫よ。ほら、あの宇宙灯台はどこか遠くに行くの。私たちに意地悪するより、自分たちが離れる方を選んだのよ」
「まるで、意志があるようだ……」
ただ見上げることしかできない家族の前から、宇宙灯台は急速に離れていく。人の手の届かなない星の海の遙か彼方へと。
「おひっこし〜♪」
『さあ、引越しだ♫』
『みんなで、お引越しだ〜♬』
どうしてこの選択をもっと早くしなかったのだろうな?
私は百数十年も留まっていた場所を離れるのにワクワクしていた。体内に蠢くパートナーも子供たちも同じ気持ちでいるようだ。この深宇宙の何処かに、私たちが静かに暮らせる場所があるはずだ。その場所を探すのはきっと悪くない。
どこになるかはわからないが、きっと私たちはたどり着く。新天地に!
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