20人が本棚に入れています
本棚に追加
1話 サクラでお仕事
生きとし生けるものは、すべからく、美しいものを愛している。
それを眺めて心の糧とし生きている。
我々は、美しいものを愛するために生きているといっても過言ではない。
私のように、永遠の命を持つ神でさえも。
* * *
暗闇を歩く。
ヒールの高い音が、果てのない闇に響きわたる。
「呼びましたか」
漆黒の机の前で足を止める。
私の向かいには、死神結社西洋支部長――ハデスが、深い背の椅子にもたれかかって座っていた。
「東洋支部からの依頼が来た。日本に、どの死神にも殺せない男がいるとか。その魂の回収を君に頼みたい。
死女神、キル・リ・エルデ」
「引き受けましょう。私にできない仕事などありません」
かくして私は、日本につながる扉の「鍵」を受け取った。
最初のコメントを投稿しよう!