プロローグ

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プロローグ

入学前のオリエンテーション。 友達もいない中、親にも付いて来て貰えず、一人で学校に行くなんてどうしよう。 何でこんな時に熱なんて出すんだ。 一緒に行こう、て約束したのに。 同じ中学の同級生はいるけれど、まともに話したコトも無い。しかもそいつらは、既に新しい友だちを作っている。 まだ入学もしていないのに。入試の時にでも仲良くなったのだろうか。 自分も試験中に、一人や二人声を掛けておけば良かった。面接も三人一組だったから、声を掛けるタイミングはあったかもしれない。 けど、そんな余裕あるか普通。 人生を決める大事な試験に、自分以外と仲良くする余裕なんてある方がおかしい。ビッチだビッチ。友達作りのビッチだ。 最寄り駅まで自転車で十分。電車に揺られて三十分。そこから市営バスに乗り換えて十分。 バスを待つのに二十分も掛かる。家から学校まで一時間以上もある。部活の朝練と比べれば、早起きする必要は無いから楽と言えば楽だけど。通学だけで、そんなに時間が掛かるなんて。毎日この時間を掛けて通学するなんて考えられない。 でも仕方ない。ここしか選択肢は無かったのだから。 それに今日さえ乗り切れば、一人は無くなる。 今度会った時に絶対に説教してやる。ケーキを奢らせてやる。家の事情はあっても、寂しい思いをさせたコトを後悔させてやる。 あっちは、後日一人で来るコトになるだろうけど、大勢の中で一人でいるのと、誰もいない中で一人でいるのとでは気持ちが違う。 バス停から学校まで、大勢の同級生と歩いていた。 それだけで胸がギュウと絞めつけられるように寂しい。 校門を潜るとさらに人が増えた。 体育館前の受付で並んでいる。三列になっている。 そっか、三つの学科があるから、その列か。 自分は普通科。生活デザイン科とビジネス情報科と比べれば生徒の数は...、一緒くらいか。 ため息が出た。 こんな所まで比較しなくてもいいのに。癖になっている。 普通科の列はどれだろう。人だかりで受付がしっかり見えない。事前に配布されたオリエンテーションの地図には、受付場所の記載はあれど、列の詳細は書かれていない。 糞。分かるように、しっかりとしておけよ。 合格通知も一応持ってきたけれど、意味が無い。周りの生徒で合格通知を持っている人はいない。何だか恥ずかしくなってきて、合格通知は仕舞おうと鞄を開けた。 ドン、と後ろから歩いて来た生徒と肩がぶつかって、合格通知が地面に落ちる。 チッ、と舌打ちをするが、その生徒は既に列に混じって見えなくなっていた。急いで拾おうとすると、別の人が拾ってくれた。 「あっ、普通科、なんだね。俺もなんだ」 「そうなんだ。でも普通科の列が分からなくて。分かる?」 優しそうな顔。自分よりは背が高いけれど、男子の中では低い方なのか? 同じ学科だったコトもあって、心が軽くなる。 「あっちだよ。さっき先生が言ってた」 優しそうな男子は指をさした。その指の先の列には、さっき肩にぶつかって来た奴もいる。 ごめんくら言えよな。
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