3人が本棚に入れています
本棚に追加
『自分に自信が無いヒロイン。
そんなヒロインは、クラスの中でも人気者で誰からも愛される同姓から声を掛けられた。
その子に声を掛けて貰い、友達になり、自信を持つコトが出来た。
けどそれは、人気者が自身を引き立てるために利用しているに過ぎなかった。
派手になり過ぎないように、ヒロインに化粧を教え、常に横に置く。
地味な奴とも友達になってあげる人格者。
打算的な人気者は、主人公に恋をしていた。
その主人公に近づくために、ヒロインを利用して、
恋仲になろうと画策していた。
けれど主人公は、ヒロインに心惹かれていた。
それに気付いた人気者は、嫉妬してヒロインをイジメるようになる。
ヒロインをクラスで孤立させるコトで、主人公からヒロインを遠ざけようとしたのだ。
でも主人公は、そんなヒロインを見捨てられずに
助けてしまう。
結果的に主人公もイジメられるようになる。
それでも主人公はめげなかった。
ヒロインと共にイジメに立ち向かい、本当の自分を見つめ直して行くのだ』
「だってさ」
学校が終わった帰り。
風織と回廊の滝に訪れていた。
平日の閉園間近の時間。
滝前の広場には誰もいなかった。
日はもう落ち始めている。
冬の日の入りは早いな。
「こんな内容を新入生に見せるって、ドロドロし過ぎてるでしょ」
海人は苦笑した。
「嫌がらせだよ」
でも、それを語る神木の目は真剣そのものだった。
「まさに美玲と私と海人だよね。二組の皆んなには見せられないよ」
「桜生に殺されそう。桜生、風織のコト好きだしね」
顔を歪ませ、今にも吐きそうにべー、と舌を出した。
「あんなコトしたのに?」
未だに陰部を晒した愚行を許せないでいる。
「それくらい不器用だったんだよ。せめて普通に接してあげて。会う度に風織のコト聞かれるから、めんどくさいよ」
「海人が一緒ならいいよ」
海人は肩を竦めた。
それはそれで、桜生から嫉妬を買いそうだ。
ズレた眼鏡の位置を指で直す。
「コンタクトに戻さないの?」
「あー、多分右目ずっと閉じてたから、視力変わってると思う。今の眼鏡も度があってないんだよね。一回視力測り直さないと。家にあるコンタクトだとかえって見づらいもん」
右目の怪我が治っても、未だに極厚レンズ眼鏡のままだ。
二人でベンチに座り、滝を眺めていた。
滝を眺めていると、また動悸がしてくる。
あの時、 風織を助けるために泉に飛び込んだのが嘘のようだ。
まさに奇跡。
トラウマは簡単には克服出来ない。
一度、家の湯船に浸かってみようとしたけれど、怖くて溺れかけた。
風呂場から飛び出して、全裸で洗面所の床にうつ伏せになる海人を見て、詩織と久美子は呆れていた。
風織のためだから泳げたのだ。
黙っていると、風織が指で太ももをツンツンと突いて来た。
「なーにさ」
「何にも」
「何だそれ」
フフ、と笑う風織に、苦笑する。
こんな感じで兄にも甘えていたのかな。その分自分に甘えればいいさ。詩織の甘えん坊は、崚行に向き始めている。
最初のコメントを投稿しよう!