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風織は膝の上に両肘を乗せ、顎を乗せた。
「一人で行くコトになって、凄く不安だったんだって。想像出来ないよね、美玲でもそんなコト思うんだって。その時に声を掛けてくれたのが海人みたい」
──一緒のクラスだったら、よろしくね。
話を聞いて唖然とした。
全然覚えていない。
絶対に、緊張から八方美人モード全開にしてい
たに違いない。
──嫌いなんだよ! 最初から!
今更ながら、あの時言い放った言葉に罪悪感が込み上げてくる。
「あんなコト言うんじゃ無かった」
額に手を当てて、項垂れる。
海人は覚えていなくても、美玲ずっと覚えていたのだ。
そこから風織と仲良くなっていくにつれて、親友に対して嫉妬心が大きなっていったのか。
実は渦中の人物は自分だった。
「なら俺がいないのが一番正解だったのかもね」
「直ぐそうやって悲観する」
風織は頬をぷくっと膨らませると、「エイっ」と肩に小さくパンチをしてきた。
「海人の言葉があったから、実里たちとも元に戻れたんだよ。美玲」
海人に謝罪したように、美玲は実里と鏡花に謝罪をしたらしい。
そして、二人は彼女の謝罪をすんなりと受け入れたという。
「実は殆どよっぴーのお陰なんだよ、俺」
「よっぴーの?」
ここでラジオパーソナリティの名前が出てきて、風織は首をかしげる。
「ラジオに投稿される質問に、よっぴーいつも真剣に答えてくれるからさ。その言葉で何度救われたコトか。あの人のお陰で、城ヶ崎や藤野さんの嫉妬に気付けたし」
手の位置をズラすと、風織の手に当たってしまい、慌てて引っ込めた。
「じゃあ、私の恩人の恩人だ!」
「神様の神様?」
「そのとーり」
天高く指を伸ばした。
「私もよっぴーみたいになろうかなー」
そう言うと風織は、ぴょんと立ち上がった。
「ラジオ? 声優? 風織ならアイドル声優になれそうだね」
直ぐに眉をしかめて、唸った。
「でも嫌だ。めっちゃ嫉妬しそう」
「アハハ、海人の嫉妬は凄く壊そう」
「何でだよ」
風織は靴で地面に転がる石を蹴る。
その姿を眺めていた。
「俺も脚本に挑戦してみようかな」
「演劇部に入るの?」
頷いた。
「折角文系コースに行くし、文芸部で鍛えて貰ったのも活かせるしさ。やれるコトは挑戦してみたい。まだ将来やりたいコトははっきりとしないけど。やらない後悔より、やる後悔じゃない?」
「あっ、今の凄く名言っぽい」
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