プロローグ

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「一緒に並んでいい? 友達が熱出して、来られなくなって一人だったの」 「うん。俺も一人だったから。友達来られなくてさ」 男子のお陰で列に並べた。 受付を済ませると、後は教科書や制服の採寸など流れ作業だった。男女で途中で別れてしまったけれど、帰りがたまたま一緒だった。 ぎゅうぎゅう詰めのバスの中で、小説を開いて見入るあの人が見えた。駅で降りると、急いで駆け寄った。 残念ながら電車の方向は違うから、ここでお別れだ。 「クラス一緒なのかな?」 「それはまた後日連絡来るもんね」 「一緒だと嬉しいね」 「そうだね。そうだったらよろしくね」 自分の言葉に、優しく返してくれる。 僅か五分にも満たない短い会話。 でも、度々見せる笑顔に、心がどんどん軽くなる。 「名前はなんて言うの?」 そういえば聞いていなかった。 「俺?  俺は───」
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