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多分平凡な始まり
ハッハッハ、俺は天見紘斗。ちょっとした高校1年生だ。
記憶喪失になったことも前世の記憶を持っているわけでもない、ただの平々凡々な平凡だ。ただ、見た目だけは神様の祝福を受けたようで、触れることすら汚してしまいそうでできないらしい。困ったもんだ。まぁ、それぐらい顔が良いということだ。そのおかげで、美しい男ランキング総合1位でいることができている。
あぁ、俺はナルシストではない。俺の顔が良すぎるだけだ。
ちなみに、今なんの時間だと思ったそこの俺、SHRだ。
「今日は転校生が来るぞー」
「えっ、転校生!?」
「えー!どんな子が来ると思う?僕は僕より可愛い子がいいなぁ」
「僕も可愛い子がいいな!…チワワ×チワワ見たいし」
「平凡来い!」
「我らと平凡同盟を組むのだ!」
教師の言葉に皆が反応する。
まさかのまさかの転校生。誰もがこれにはお手軽びっくりビックバーン。そして俺もビックバーン。
「入ってこい、麻央」
教卓に座った態度の悪いホスト(教師?)が、廊下にいるであろう転校生に入室を促す。
女っぽい名前だなんて1ミクロンしか思っちゃいない。間違えた1ミクロンも、だ。忘れろ。
「おう!」
元気な声に好感を持ったのも束の間、扉を開けて教室に入ってきたのは、ぼさぼさヘアーにマジックミラー眼鏡をかけた転校生。
「俺は何をすればいいんだ?」
「あ〜、とりあえず自己紹介でもしてくれ」
「わかった!」
人の話はよく聞いておけと教わった俺は、ひとまず転校生の見た目を記憶から消すことにした。これぞインスタンス記憶喪失。そして流石俺、今の会話を聞き逃した。
今からなにするって?席移動?自己紹介?何も聞いてなかったわ。ごめん。
「はじめましてだな!俺は宮澤麻央だ!これからよろしくな!」
自己紹介だった。元気98.37%ぐらいの。
それにしても、やっぱり女っぽい名前…じゃない。
「元気だね〜。こちらこそよろしく」
「拙者ともよろしく頼む!ところで平凡同盟を組む気はないか?!」
うちのクラスは変わった奴しかいないから、ぼさぼさヘアーでマジックミラー眼鏡の転校生も安心して学校生活を過ごせることだろう。
「先生、俺の席はどこだ?」
「あそこ」
あらやだ、先生が隣の席を指さしているわ。ついに頭が…。精神科でも紹介しようかしら。ワンコイン天見カウンセラー。お代は前払いで。
「じゃ、天見、後は頼んだ」
「ふぁっへふははいへんへい!」
「どうした」
「はんへほうはんへふか!」
「そりゃあ、早弁なんてしてっからだろ」
俺がいつも通り早弁をしていると、いつも通りの返答がかえってくる。
いつもこれで雑用を任されているおかげで、雑用ランキングでも1位を取れそうである。そんなランキングはないが。
「遅刻したんですもん!」
「そんなことはどうでもいい。俺は食堂行ってくるから、後は任せた」
「くっそ大人め!」
少し遅めの朝食に文句を言ってきた大人への愚痴を吐き捨てていると、転校生が隣の席に座った。
「なあなあ、お前なんていうんだ?」
「僕の名前は天見紘斗だよ。天ちゃんって呼んでいいよ」
適当に自分でつくったあだ名を紹介してみたがどうだろう…。めっちゃ上から目線だったが。
「天ちゃんな!これからよろしく!」
俺の心配も…いや、心配はしていなかったが、しっかり天ちゃん呼びをしてくれて俺の心はほっこりした。
そういえば、伝え忘れていたが、俺はこの学園では一人称を僕としている。なぜかというと、この美しさを隠すために色々したところ、可愛い寄りの平凡になってしまったからだ。
俺が中身のなくなった空の弁当箱を片付けていると、転校生は前の爽やかに手を出していた。俺というものがありながら…。
握手していただけだった。これには脳内の乙女心もにっこり。
「ねえねえ、天見くん」
「どうしたの?爽y、ローランくん」
彼はルイス・ローラン、イギリスから来たイギリス出身のイギリス人だ。ミントの妖精かと思うくらいには爽やかしている。このB組の爽やかを全て吸い取っていると言われている。
「一緒に宮澤くんを案内しない?」
ほら、この学園広いから、と付け足された言葉に納得する。
びっくりした。まさかの3人デートかと思った。
「いいけど宮澤くんは?」
「俺、まだよくわかってないから案内してくれると助かる」
宮澤くんも案内されたいようなので案内することにした。…ちょーっと悪い予感がするのはなぜだろう。平凡な学校生活が崩れる気がする。今からでも断るか?いや、ここで断ったら男が腐る。間違えた廃るだ。
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