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きっと素敵な非凡生活
あの後、そのまま名誉紳士を素通りして、俺は教室に向かった。
話し掛けてこないでほしい。じゃないと、俺がチワワもどきの空手大会の聖地に強制入場することになってしまう。
そういえば、さっき後ろから『え??ちょっ、え???突然どしたの???????』って声が聞こえた気がしたりしてたりしたんだけど…、まっいっか!俺ってよく聞き間違えとか空耳とかあるし!
ちなみに空耳で一番記憶に残ったのは、中学のHRで『礼!』って聞こえたから礼したら、誰もやってなくて隣の友人に『お前、何してんの?』って言われた。あいつ、気づかなかったフリしろよ、恥ずかしかったじゃねえか。
教室に着いた俺は、教室の中に人が居ることを確認して扉を明けた。
「みんなーっ!大変だーっ!食堂が血塗れにー!」
「なんだってぇ!?!!!」
「それは本当か!?!?!」
「ちょっと見てくる!!!!」
教室に居たのは三人だった。
そんな急いでるわけでもないのにガタガタと音を鳴らすな。ああ、無関係の人の机にあったジェンガが倒れた。トランプタワーも倒れた。あれは土下座しても許してくんねえぞ…。
「やべぇ!タワー名人のタワーが!!!!!!!」
「なんだって!?!?!!」
「くそっ!誰がこんなことを…!」
「君ら、仲良いね」
三番目の奴、しらばっくれんな。このままだと、俺まで床に接吻をすることになるだろ。俺、床に愛情も尊敬もないのに、初めての接吻奪われんの?床に?しかも連帯責任で。
あ??なんでキスじゃないのかって?キスだとうちのクラスの魚愛好家が勘違いするだろ。あいつ、出没自在な神出鬼没なんだ。
そんなところで、扉が勢いよく開いた。
「ねえ!!!会長が死んだ!!!!!」
衝撃的なことを言いながら扉を開けたのは、思い込みの激しいタワー名人まるくんだった。三人組は息のあった様子で、まるくんから倒れたタワー達を隠した。
「やあ、まるくん。そんなに慌ててどうしたんだい?」
「それより、お手洗いに行きたいとは思わない?」
「もしくは他の教室に遊びに行くとか」
お前ら、必死すぎだろ。
というかまるくん、何様は死んでない。
「まるくん、会長は死んでないよ」
「でも会長、運ばれるとき『後は…、頼んだ…』って…」
「ガクッ、ってしてた?」
「ううん、ゴンッ、ってしてた」
会長…、間違えた。何様、なんでそんなにややこしいことをするかなぁ。
ここの学園の生徒は、体育のときでさえもキャッキャウフフのオホホでワハハしてるから、倒れた人を見ると『まさか…、死んでる!?!!』ってなるからやめてほしい。教室に戻って来たときには、みんな喪服だぞ。机に花と花瓶だぞ。なんなら遺影まで置かれるぞ。この学園の生徒全員集まれば古墳だって作れるんだぞ。いいのか何様。
「…僕、席に戻ってジェンガの続きしたいんだけど」
「早まるな!!!!」
「そうだ!ここは危険だ!!!」
「早く帰れ!!!!」
まるくんが遠回しに『はよどけ』と言うと、三人組はこれまた息のあった様子で、言葉を返した。
はよ謝れ。
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