多分平凡な始まり

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紺太(こんた)麻央(まお)!」 綺麗な声が聞こえたかと思えば、目の前の毬藻ヘアーに飛びかかる人影が。隣の転校生は目を見開き、その隣の爽やかくんは真顔。 何があったんだ爽やかくん。 「探していたんですよ!」 毬藻ヘアーを覆い隠すように抱きついたのはこの学園の副会長、七沢(ななさわ)美穏(みおん)だ。確か、学園内の抱きたい抱かれたいランキングというものでは、抱きたいで1位を取っていた記憶がある。 この学園で俺が1位を取ることは無さそうだ。まあ、世界では俺が1位だけどなぁ!?(対抗心) 「美穏?!」 「ええ!紺太と麻央のダーリンですよ!!!」 副会長の言葉に引いてしまったのは俺だけではなかった。 自分の名前を言われたことがショックだったのはわかるがオムライスに呪詛を吐くな、不味くなってもいいのか転校生。 「ほら麻央!僕の胸に!」 副会長の方を振り向くと、すでに無抵抗で胸に収まっている毬藻ヘアーが。 それでいいのか毬藻ヘアー。俺の隣の転校生は引いているぞ毬藻ヘアー。男の娘もびっくりしてるぞ毬藻ヘアー。 「ごめん、名前教えてくれない?」 副会長が隣の転校生にも手を出し始めたので、俺は男の娘に手を出すことにした。 たとえどんな名前でも、俺は君をちゃん付けで呼ぶよ。 「あ、うちね(かささぎ)拓実(たくみ)って言うんだ」 うち系男の娘だったなんて予想外。確かに、小学生とか中学生のときに一人称がうちっていう女の子いた。男子校でうちって聞くのは方言系男子に会ったときだと思ってた。おかげでちゃん付けが消えかけた。 「拓実ちゃんって呼んでいい?」 「いいよ。えっと、天見(あまみ)紘斗(ひろと)くんだったっけ?」 「うん、天ちゃんって呼んで」 「わかった。天ちゃん、これからよろしくね」 ちゃん付けも天ちゃん呼びもコンプリートし、俺の心は達成感で満たされた。 男の娘改め拓実ちゃん、長い付き合いになりそうだ。ところで、いつの間にかオムライスが消えている件についてはどう反応すべきなんだろう。 「…あーん」 「あーんっ!まさか、正樹(まさき)があーんしてくれるなんて…!」 まさかの正樹と呟いてしまったのは不可抗力だと思う。いつまでラブラブバカップルごっこしてんだよ。というか爽やか残念すぎるだろ、残念系イケメンだってお前とは比べられたくねえよ。 「ちょっと!麻央の隣に座るなんて何様のつもりなんですか!?」 「平凡様のつもりですがぁ!?」 副会長に突然キレられたのでキレかえしてみたらどんな反応をするのか、検証いきましょう!実況、解説、全て天見紘斗がやらせていただきまーす! ちょっとしたおふざけで、俺の心は放送部のように輝き始めた。 これぞshining紘斗、これで夜も昼のような明るさに。 そして、俺の心が輝き始めた頃、副会長の心は俺と同じぐらいの輝きを炎に変えていった。副会長の顔が真っ赤に染まるところを見て、俺は察した。二度目の駄目なやつ、サブタイトルは『遂に終わりか、平凡よ』に決まった。 「平凡ごときが、馬鹿なことを言わないでください!!!!!」
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