多分平凡な始まり

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お母さん副会長と反抗期会長が親子喧嘩をしている間に、逃げてしまおうと立ち上がると、目の前には壁。 あれれーおかしいぞー、こんなところに壁なんてあったっけぇー?無かったよね!うん、無かった!つまり、ホラー(ウォール)?ケチャップで手形つけてやろっ! 結局、手形ケチャップは付けずに、この壁はなんなのか気になった俺は上を向いた。上には目があり鼻あり口があり、つまりは人の顔。正体はわんわん書記。 すみません、ケチャップはつけないのでそんな目で見ないでください。そんなキラキラした目で見られると旅立った良心が疼きます。 そういえば、わんこでも犬でもないのにそれっぽい理由が分かった気がする。わんこ感はその純粋さからきてるのかな?犬っぽさはその身長ね!ウフフ、気に入ったわ、このキャラ。 「…、こんにちは~…」 「うん、…こんにち、は」 わあ、可愛い。なんだろう、アロマセラピー?マイナスイオン?アニマルライク?…間違えた、確かに動物は好きだけど、この場合はライクではなくセラピーだ。ていうかアロマは香ってなかったわ。 「いっしょに、ごはん」 「あ、食べます?なら、席移動しましょうか」 「うん」 俺はわんわん書記という盾を使って、中庭がよく見えるカウンター席に向かった。 この人、めっちゃほわんほわんしてる。よくこの学園で生きてこられたな。 カウンター席に着いて、俺とわんわん書記はタブレットを見た。 タブレットは1台しかないので、自然と近くなる顔と顔。 化粧少々にウイッグと伊達眼鏡の俺は大ピンチ。おいこらそこ、そういや顔隠してたな、とか思うな。 「何食べます〜?」 「天ぷら…!」 天ぷらかぁ、そっかぁ。…この人やばい。素直というか純粋というか、幼女よりも幼女してる。幼稚園で違和感なくおままごとして遊んでそう。三輪車ツンデレBOYの心を無自覚に弄んでそう。 「天ぷらとうどんのセットでいいですか?」 「うん…!」 「冷たいのですか?温かいのですか?」 「冷たいの!」 ずっとキラキラおめめなんですけどこの人。可愛いんですけど。尻尾見えるんですけど。というか、さっきよりも喋るようになったんですけど。可愛いの暴力が激しいんですけど!?!なんなんだこの人。 可愛さに悶えて、俺の分を頼み忘れていたので、適当なものを頼んでおいた。何が来るかな。 「お待たせ致しました、季節の天ぷらセットとベジタリアンお手製のビーフが入っていたクリームシチューです」 こと、と目の前に置かれた料理とウェイターさんの言葉で、俺の頭は疑問が溢れかえった。 ツッコミどころしかない料理来たんだけど、どうなってんだこの学園。 ベジタリアンお手製?誰も聞いてねえよ。というか、ビーフが入っていたクリームシチューってなんだよ。ベジタリアンお手製のビーフが入っていないビーフシチューだったらまだわかる。ベジタリアンお手製だし。何故クリームシチューにした。それに、ビーフが入っていた、ってどうした。なんで過去形なんだよ。ベジタリアンに排除されたのか?それなら書かなくていいよ。 俺はため息をついて、クリームシチューをスプーンで掬った。 スプーンには鶏肉がのっていた。 俺は2度目のため息をついた。 ベジタリアンお手製なら肉は入れんな。
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