46人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
お母さん副会長と反抗期会長が親子喧嘩をしている間に、逃げてしまおうと立ち上がると、目の前には壁。
あれれーおかしいぞー、こんなところに壁なんてあったっけぇー?無かったよね!うん、無かった!つまり、ホラー壁?ケチャップで手形つけてやろっ!
結局、手形ケチャップは付けずに、この壁はなんなのか気になった俺は上を向いた。上には目があり鼻あり口があり、つまりは人の顔。正体はわんわん書記。
すみません、ケチャップはつけないのでそんな目で見ないでください。そんなキラキラした目で見られると旅立った良心が疼きます。
そういえば、わんこでも犬でもないのにそれっぽい理由が分かった気がする。わんこ感はその純粋さからきてるのかな?犬っぽさはその身長ね!ウフフ、気に入ったわ、このキャラ。
「…、こんにちは~…」
「うん、…こんにち、は」
わあ、可愛い。なんだろう、アロマセラピー?マイナスイオン?アニマルライク?…間違えた、確かに動物は好きだけど、この場合はライクではなくセラピーだ。ていうかアロマは香ってなかったわ。
「いっしょに、ごはん」
「あ、食べます?なら、席移動しましょうか」
「うん」
俺はわんわん書記という盾を使って、中庭がよく見えるカウンター席に向かった。
この人、めっちゃほわんほわんしてる。よくこの学園で生きてこられたな。
カウンター席に着いて、俺とわんわん書記はタブレットを見た。
タブレットは1台しかないので、自然と近くなる顔と顔。
化粧少々にウイッグと伊達眼鏡の俺は大ピンチ。おいこらそこ、そういや顔隠してたな、とか思うな。
「何食べます〜?」
「天ぷら…!」
天ぷらかぁ、そっかぁ。…この人やばい。素直というか純粋というか、幼女よりも幼女してる。幼稚園で違和感なくおままごとして遊んでそう。三輪車ツンデレBOYの心を無自覚に弄んでそう。
「天ぷらとうどんのセットでいいですか?」
「うん…!」
「冷たいのですか?温かいのですか?」
「冷たいの!」
ずっとキラキラおめめなんですけどこの人。可愛いんですけど。尻尾見えるんですけど。というか、さっきよりも喋るようになったんですけど。可愛いの暴力が激しいんですけど!?!なんなんだこの人。
可愛さに悶えて、俺の分を頼み忘れていたので、適当なものを頼んでおいた。何が来るかな。
「お待たせ致しました、季節の天ぷらセットとベジタリアンお手製のビーフが入っていたクリームシチューです」
こと、と目の前に置かれた料理とウェイターさんの言葉で、俺の頭は疑問が溢れかえった。
ツッコミどころしかない料理来たんだけど、どうなってんだこの学園。
ベジタリアンお手製?誰も聞いてねえよ。というか、ビーフが入っていたクリームシチューってなんだよ。ベジタリアンお手製のビーフが入っていないビーフシチューだったらまだわかる。ベジタリアンお手製だし。何故クリームシチューにした。それに、ビーフが入っていた、ってどうした。なんで過去形なんだよ。ベジタリアンに排除されたのか?それなら書かなくていいよ。
俺はため息をついて、クリームシチューをスプーンで掬った。
スプーンには鶏肉がのっていた。
俺は2度目のため息をついた。
ベジタリアンお手製なら肉は入れんな。
最初のコメントを投稿しよう!