多分平凡な始まり

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まさに地獄絵図。阿鼻叫喚。 何故か赤く染まった床。倒れた生徒。ここだけ聞くと、ただの殺人現場だ。正直、見てもただの殺人現場だ。転校生たち大丈夫か????? 恐る恐る、音のしたほうを見てみると、そこには… 「な、何、転校生ぃぃぃぃ?!??!!!」 額から血を流した何様、割れたマジックミラー眼鏡、眼鏡がなくなって素顔が見えるようになった転校生。何があった?????????????? それにしても危なかった。堂々と『何様』って叫びそうになった。バレたら平凡じゃなくなってしまう。 「先生!こっちです!!」 「何があったらこんな殺人現場作れんの」 「どこからか投げられたハンカチを拾おうとした生徒の手を会長が踏んで、会長が滑って転校生に頭突きした結果、この殺人現場ができました!」 「説明ありがとう。ルーブ・ゴールドバーグ・マシンが上手くいったことだけは分かったよ」 「お分かりいただけて光栄です!」 なるほど、全て何様の不注意によるものだということを理解した。そして1番の被害者が転校生だということも。何様は額から血が出ているけど、転校生は眼鏡を割られたから、頬や額や鼻から血が出ている。目はギリギリせーフだったみたいだ。 ただ、1番の問題は、転校生の怪我の場所だ。転校生はどうやら顔面ランキング総合5位の奴らしい。そして転校生が怪我をした場所は顔。そう、顔。顔面ランキング上位者の顔に怪我。 何様もランキング上位者だが、何様は額だし何様の不注意によるものだから気にしなくて良し。 まっ、俺には何の支障もないからどうでもいいか! …なんて、言えたら良かったんだけどな。 1位としての体裁があるから、お見舞いに行かなければならない。一応、知り合いだしな。ランキング上位者が怪我したら1位がお見舞いへ行くっていうの、どうにかなんないかなぁ…。めんどい。 「会長、怪我してる。転校生も…」 そういや俺の隣に居るのは、世界平和をその顔で生み出すわんわん書記だった。うんうん、癒やし。 人の怪我を心配しているわんわん書記はとても優しいと思う。けれど、そろそろチャイムが鳴ってしまう。それに、ランキング上位者が顔に怪我をしてしまったことで、今日の授業はなしになって、全校生徒が寮に帰らされるだろう。 「先輩、そろそろ教室に戻らないと…」 「けど会長…」 「大丈夫ですよ。ランキング上位者なので、すぐに病院で治してもらえますから」 「…、わかった」 きっと今の言葉の間は、実家の病院で治せない人達を思ってのことだろう。 やっぱり、顔がいいとは罪深い。
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