失恋ソングを歌わないで

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「じゃあ空代のいないとこで歌う」 「嫌だ!」 「じゃあいるとこで歌って良いの?」 「よくない!」 「わかった、じゃあこうしよう。歌っていいか許可とるよ。ね? 先に言えば心の準備できるでしょ」 とんでもないことを言う。 それじゃあまるでフラれる覚悟をするみたいだ。 思わず目尻に涙が浮かぶ。 「よしよし。その後はたーくさん好きって言うから。ね?」 「……ほんと?」 「めちゃめちゃ甘やかす!」 それはそれで役得なのでは。 まぁ、僕だって真心の歌は聞きたいし。歌うな、とはできることなら言いたくない。 散々悩んだ末、「約束だからね」と小指を立てた。 「うん、約束ね」 真心の小指が絡まってくる。 僕は真心の肩に額を乗せた。頭を左右に振ってぐりぐりと押し付ける。 「歌って。失恋ソング以外。……歌って」 「んー。あ、じゃああれにしよ。……~~♪」 そう言って真心が歌い始めた曲は、最近よく聴く応援ソングだった。 了
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