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ちょん
甘い匂いと柔らかな温もりに驚いて目を開けると、見知らぬ女子が横で眠っていた。
別に、昨日お酒をたらふく飲んで気付いたらこうなっていたみたいなことはない。
というか、俺は高校生だ。お酒なんて飲めないし、飲むような不良でもない。至って普通の健康男子だ。
目の前に女子がいたからと言って、過ちを犯したという記憶はない。あってほしかったが、そういうものはないらしい。悔しくないぞ、くそぅ!
ふぅ、冷静になろうか。
今、俺の部屋で彼女と二人きりで、ベッドの上。さらに彼女は淡いピンク色のキャミソールという無防備な姿で眠っていて、可愛い顔をこちらに向けている。
最高のシチュエーションだ。キスしてやろうか。
待て待て、早まるな。そういうのは、彼女の同意を得てからの方がいい。
いや、待てよ。眠っているなら、キスしたって、バレやしないじゃないか。なにそれ、天才じゃん、俺。
それにしても、彼女の吐息がさっきから俺の頬を湿らす。
この至近距離、堪らない。
健全な男子高校生はこんな状況に何もしないなんて、無理だ。断言できる。
よし、勇気を出せ、針崎蜂真!
お前はここで何もしない不健全野郎なのか?
違うだろ!
彼女の艶やかな唇を凝視しながら、心を鼓舞する。
ごくり。
唾を飲み込む音がうるさい。
それでも、ゆっくりと、その桃色のそれに近づけていき……
ちょん、と人差し指で触れてみた。
柔らけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!
俺は健全なるファーストタッチに歓喜した。
も、も、もう少し……っ!?
さらに、セカンドコンタクト。もちろん、人差し指で、ちょんっ、だ!
うへぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!
なんて、素晴らしい朝なんだ。これが彼女持ちなのか。殺意が湧くぜ。まったく。あ、でも、今は俺も彼女持ちなのか。ほえええええっ!?
「ぅう……ん?」
そこで、彼女が微かに眉をひそめた。美しい。目を開けた。なんて、綺麗な瞳なんだ。
無垢な目で、ジッと見つめられること、数秒。
「もうっ」
彼女は眉をハの字にして、俺の顔を両手で押して、遠ざけた。
「鼻息、荒いって!」
「え? え?」
俺は突然の指摘に動揺し、ベッドから落とされてしまった。
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