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この辺りで評判の金持ち。そいつの家に空き巣に入った。
下調べはばっちりで、金目のものがどこにあるかは概ね判っている。
高価な物があるのは一番奥の部屋だ。だから他の部屋は素通りして、真っ直ぐに奥の部屋へ向かった。
部屋に入るなり視界に飛び込んだたくさんのお宝。本当に、絵に描いたような『金持ち』の部屋だ。
虎の毛皮の敷物とか鹿の頭部の壁掛け剥製とか、物語の『金持ちの家』でしか見たことがないもんな。
こういうの持ってる奴は持ってるんだよな。
いや、ぼんやり辺りを見てる場合じゃない。さっさと手ごろに餅はベル高価な物を盗み出さないと。
…あれ? 何か今、床が動いたような…。
こんな時に地震か?
違う。そうじゃない。俺が乗っかった虎の毛皮が震えている。いったい何が起きてるんだ?
* * *
家に戻ると、真っ先に奥の部屋へ向かった。
菓子カメラがこっそり仕掛けてあるから、何が起きたのかは一部始終確認できている。でも、こうまで強い血の匂いが残っているとは思わなかった。
すぐに窓を開け、換気をする。そのついでに、床の敷物を窺った。
よしよし。血の匂いはするけれどそれだけ。血の染みとか、汚れはまったくついていない。
どうやら今回は、獲物をこぼしたりせずに綺麗に食べることができたようだ。
大枚はたいて購入した、我が家の敷物兼泥棒対策品。
人の家に入って盗みを働こうとする奴になんか同情する余地はないから、こいつがきちんと役目を果たした場合、コソ泥がどうなるかなんて知ったことじゃない。
これからも、盗人が入り込むようなら、容赦なくお前の務めを果たしてくれよ。
虎の敷物…完
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