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「また、暴走した。ごめんエヴァン」
「気にしないで。僕も昨日そうだったし」
エヴァンは微笑んで俺にカフェオレを手渡した。
「ありがと…」
俺はカフェオレを受け取って机に置き、ティッシュで真っ赤な鼻をかんだ。
「今日は鍛錬するの?」
「うん、ラウルと約束があって」
俺がそう言うとエヴァンはふーん、と唇を尖らせた。
練習場へ行けばもうすでにラウルは鍛錬を始めていた。
「ラウル!」
「!」
ラウルは汗を拭うと大剣を地面に突き刺し、にへと笑って俺を見た。
「あれ以来何もない?」
「あったあった。すごく手練れのアサシンだったよぉ…」
ラウルはそう言って自分を太い腕で抱きしめ、くねくねとした。
「え、襲われたの?」
「うん、多分俺がガロ王子の次の護衛だからじゃない?」
「……耳が早いね」
俺は少し嫌な気持ちになりながらも木剣を握った。
「じゃあ今日も手合わせよろしくね」
「もちろん」
俺たちは食堂で飯を食いながら休憩をとり始めている。
「次の要請はどこ?」
「シヴァール領、来月領地争いの戦争が始まるってさ。まあどう考えてもシヴァールの方が不利だけど今回に関しては被害者だからな」
まあ王に1番近い騎士団の内の一つだからこう言う遠征は仕方がないだろう。
クラーグ騎士団、リベラル騎士団、シグルド騎士団、聖騎士団。この四つが四大騎士団と呼ばれている。
この四つがかち合う事はあまりないが今回はどうなのだろうか。
「戦争は嫌だよ」
「まあ俺らは指示に従うだけだし、どうしようもないよ」
ラウルは意外と冷たい。俺は飯をかき込んで咀嚼した。
「それより今日も団長はいないの?」
「今日はいるっぽいよ。」
「やっと渡せる」
俺はずっと持っていた紙袋の中身を確認した。
中には香水が入ってる。
「本当器用だな、リュカは」
「べつにこんなの誰でも作れる」
トレイを返して俺は団長の所へ向かう事にした。何故かラウルもついてくるけどまあいいや。
「……これを俺に?」
団長はいつも通り驚いた顔をしてプレゼントを受け取った。
「誕生日、忘れてたでしょ」
「あ、ああ。そうだったな、ありがとうリュカ…」
なんだか疲れた様子で団長は笑った。この人は結構働き詰めなのだ。
「あぁ、良い匂いだ。嬉しいよ」
香水を手首に振りかけて団長は匂いを嗅いだ。
「…手伝わなくて大丈夫ですか?」
「いーよいーよ、団長は変態だから働きたいの」
ラウルはそう言って俺の首根っこを掴んだ。
団長はそんなラウルを見て呆れた様に笑いながら俺らを見送った。
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