ぐぜり鳴く、愛の歌

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 口の中で赫のものが大きくなった、と思った瞬間、先端を抜き取られていた。引きちぎるように大きくはだけられた胸元に、熱い飛沫がかけられる。  呻きながら修造の上にすべてをぶちまけた赫は、はふ、と満足そうに修造を見下ろした。萎えてもなお大きい股間のものから手を離し、修造の胸に出した精液に触れる。 「これで、修造はぼくの匂いになった……」  赫もずっと我慢していたのだろうか。塗り広げられた液体は、膠のようにべたついているようだった。  赫の背中に手を回し、あたたかい初春の光に照らされた顔を見上げる。顎を上げてねだると、赫の方から修造に口づけてきた。互いに達した倦怠感と幸福感の中で、ゆるやかに唇をむさぼり合う。 「赫、俺と祝言を挙げてくれ」 「えっ、でも……」  やがて唇を離した修造がそう告げると、赫は困惑したような顔をした。 「今度こそ、ちゃんと結婚しよう」  こんなに修造のことを好いてくれていた赫の言葉を何も聞かず、憧れていただろう祝宴をぶち壊しにしてしまった。そのことに今更ながら気づいて、修造は胸の奥が痛むのを感じた。あの時ぶん殴るべきは赫ではなく、自分の方だったに違いない。  もうしてしまったことは変えられない。だが、何とかしなくてはならないという切羽詰まって気持ちがあった。 「……いいの?」 「ああ」  修造は頷いた。叔父さんたちに反対されようとも、二人だけでも、もう一度きちんとした形で婚礼の儀を行いたかった。  きゅ、と小さく赫が鳴いた。目を細めた、と思ったとたん、そこからまたぽろぽろと涙がこぼれてくる。 「な、泣くなよ」 「だって、嬉しくて……」  きゅきゅと鳴きながら、修造の顎下にぐりぐりと頭を押し付けてくる赫。見上げた天井の木目が滲みそうになって、修造は慌てて瞬きをした。
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