山の中、木霊する

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 ずっと我慢していた体は、早く早くと修造を急きたてる。それを必死で抑え込もうとして、苦しさに何が何だか分からなくなりながら修造は必死で懇願した。 「き、今日は、お前のでいかされたいんだっ」  きゅ、という声とともに修造を苛んでいた指先が止まる。ゆっくりと波のように、名残惜しげに引いていく快感を感じながら、修造は大きく息を吸った。いつの間にか体は崩れ、枕に縋りつくようにして頭を埋めている。 「ん……んふ、ふふ」  頭上から、赫の嬉しそうな含み笑いが聞こえた。中の指を増やされたと思うと、修造の上に覆いかぶさるように赫が乗ってくる。硬く、熱いものが腰の後ろに触れた。 「修造、これが欲しいの?」 「そうだよ……っ」  赫は後ろにいるので、その表情も、今腰に触れているものも修造は見ることができない。だが、少し目を細めて妖艶に微笑む赫と、その股間でいきり立っているものをまざまざと思い浮かべることができた。見えないからこそ、余計に掻き立てられる。  んふ、とまた笑う赫の指先が、丁寧に修造の入口を解していく。自分で「触るな」と言ったくせに今度は刺激が足りないのがもどかしく、鼻にかかった声を上げた修造は、自分の中の指を締め付けた。思ったより奥まで入っていた赫を感じて体を震わせる。自分の内、敏感で繊細な部分が無防備に弄られているというのに、満たされていく感じがあった。  上から聞こえる弾んだ息と、汗でべたつく肌が、赫も興奮していることを示して堪らなく嬉しい。 「うう、赫、早く、早くくれっ」  腰に触れる熱の塊を押し返し、そこに肌を擦り付ける。春の氷柱のように雫を垂らす修造の屹立は、今にも勝手に弾けてしまいそうだった。 「大丈夫……?」 「平気、平気だから」  まだ少し早いような気もしたが、そんなことはもうどうでもよかった。ふきゅう、と少し困惑したような声がして、しかし赫はそれ以上止めようとはしてこなかった。代わりに背中に触れていた赫の体が離れ、ゆっくりと指先が引き抜かれていく。くち、と濡れた音がして、それから再度指が修造の入り口を押した。それに沿うようにして、指よりも太く、熱い塊があてがわれる。 「ここ、だね……」  ん、と肯定とも官能の呻きともつかない声をあげた修造は、熱を受け入れようと力を抜いた。先端が窪みに引っかかった、と思うと、強い力で腰を掴まれ、蕾を押し開くように中へとねじ込まれてくる。 「あ、ああっ」  予想はしていたが、やはり大きい。見えない分いつもより熱く感じる赫の剛直が、修造の内側に触れる。 「しゅうぞ、あと、もうちょっ……ん!」  ぐい、と塊が押し込まれたのを感じた瞬間、限界まで押し広げられていた入り口が少しだけ楽になる。先端の大きい部分が入ったのだ、と理解した修造は手繰り寄せるように入り口を窄めた。 「はう、ん、ぐうっ……」  苦しい。けど、もっと奥まで来てほしい。体を動かせずただ内側を締め付けていると、枕にしがみついている修造の手の上に赫が手を乗せてきた。体液で紅い爪がぬらりと光っている。 「修造、中……あっついね。きもちい……」  はふはふ、と修造の首筋に後ろから顔を擦り付けてきた赫が、垂れる汗をなめとり、薄い皮膚を甘噛みする。修造の中で塊が脈動した。  重なった手が握られる。修造がその甲に口をつけると、小さく腰を振った赫が、残りの竿を徐々に押し込んできた。 「……は、あっ、赫ぅ」  自分では触れられない奥深くを、赫の屹立に抉られる。修造本人すら知らない一面が、赫の前でだけ暴かれていくようだった。それはどこか怖くもあったが、赫なら大丈夫だと思えた。 「うぐぅ」  やがてその先端が奥に突きあたり、修造は潰れたような声を漏らした。同時に赫の腰が修造の尻にぶつかる。 「全部……入ったよ、修造」 「うん」  耳の後ろから、甘く囁かれる。垂れてきた橙色の毛が、修造の頬をくすぐった。 「本当に、ね、本当に夫婦になったんだね、修造っ」  巻きついてくる尻尾の毛が、肌の汗にへばりつく。自分を貫くものを確認するように修造も中を締め付けると、「きゃうん」と甘ったるい声が聞こえた。 「ああっ、修造、そんなことしたら……ああっ」 「あっ、うあ」  無意識に赫が振った腰に内壁が擦れ、修造も声を上げる。 「気持ち良すぎて……止めらんない、っ、て、ああ、もうっ、ばかぁ……」  奥深く繋がったまま、小さく剛直を前後に揺すぶられる。擦れ合っているのは少しの部分だけなのに、脳天まで突き上げられるような気がした。 「あ、赫、オレも、っ、は、きもちい、から」
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