第二話 赤ちゃん解放戦線の巻

4/4
前へ
/19ページ
次へ
 だが、法案は賛成多数で国会を通過した。  私は再び絶望し、離婚した。  それからの日々はどう呼んでいいのか分からない。  絶望しながらも、全ては自分のせいだと自らを傷つけ、けれど同時に鍛えてもいた。  ボクシング、空手、リストカット。ひたすらそれのくり返しの日々。  絶望していたのは間違いない。  でも、そんな自分を騙すように、ある日突然、復讐を思い立った。  犯人に、ではない。  赤ちゃんむにむに師制度を扇動した大金(おおがね)持男(もちお)に、だ。  私は復讐する。  赤ちゃんに病気を感染させ得る豚どもすべてに。 「ターゲットは、現在C地点に向かって徒歩で移動中」  斥候の一人から連絡が入り、指揮車をすぐに到達予想地点の近くへと移動させた。  ターゲット、即ち大金(おおがね)持男(もちお)は普段であればボディーガードに囲まれ、近づくことすら容易ではない。  だが、赤ちゃんを物色するときの奴はボディーガードをつれていないことが、一年半に及ぶ調査で分かっている。もちろん、近くにいないだけで、少し離れたところにはうようよといるのだが、それでも襲撃の難易度はずっと下がる。 「デコイワン、デコイツー配置完了」  オペレーターから進捗状況が伝えられた。  今のところ、作戦は順調のようだ。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加