第一話 赤ちゃんむにむに師法成立の巻

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『赤ちゃんむにむに師法が成立しました。この法律は――』  私はそのニュースに小躍りをした。  閃いてから何年経っただろうか。 あっという間過ぎて覚えていない。  ともかくあれからというもの、人脈と有り余る資金を使って、あらゆる政党や省庁のトップに、この通称・むにむに法の素晴らしさを力説したのだ。  もちろん、一人では手が足りない。同志を募り、ときにはロビイストを金で雇って政治家へのアピールを絶やさなかった。  それが、遂に成った。素晴らしいではないか。  簡単に言ってしまえば、この法律は一定の資格を持つ者が、好きな時に好きな赤ちゃんをむにむにできるというものだ。  ただ、大きすぎる力には責任が伴う。  まずは一定の資格、つまり赤ちゃんむにむに師は年に一回の過酷な筆記、口述、実技試験に合格したエリートだけしか名乗れない。その上、受験料は高額だ。一般的な労働者の年収の四分の一ほどはするだろう。  更に、この資格は継続しない。  一年経てば勝手に消える。  だから、赤ちゃんむにむに師を続けたい者は、毎年、心を新たにして試験に挑戦しなければならないのだ。  それではこれからこの資格の使い方を紹介しよう。  まだ法律が成立したばかりじゃないかという疑問を持った君には、人生の先輩として教えてあげよう。  歳をとると、一年、二年なんてあっという間に過ぎるものなのだよ。
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