第一話 赤ちゃんむにむに師法成立の巻

3/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
 さて、色々あって第一回赤ちゃんむにむに師試験に合格した私は今、散歩を楽しんでいる。そして反対側からは、都合の良い事にベビーカーを押す夫婦が歩いてきているのだ。  ベビーカーの庇の下にある丸いお目目と目が合った。その頬っぺたは実に福々しい。  これを運命と呼ばずしてなんと呼ぼう。 「もし、そこの紳士とご婦人」  初対面の人間にお父さん、お母さんなどと声を掛けてはいけない。見知らぬ人間にそう呼ばれることを嫌う者もいるだろうし、場合によっては、赤ちゃんに結婚を申し込みに来た変態だと思う者もいるだろう。これは試験にも出る大事なポイントだ。 「はい、なんでしょうか」  紳士がベビーカーとご婦人を隠すように前に出てきた。  顔は実に柔和だが、見知らぬ者から配偶者と子供を守る心構えたるや素晴らしいものである。 「私、政府公認の赤ちゃんむにむに師でございます。あなた方のかわいいお子さんを見て、是非ともむにむにさせて頂きたいと思い、声をかけた次第です」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!