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「悪い。そろそろ帰らなきゃ」
「うん。私の気晴らしに付き合ってくれてありがと。良い解決策が思いつかなくてごめんね」
「それはお互い様だろ。……でも俺もだいぶ気分がすっきりしたよ。ひとりだったら海に行く発想すら湧かないもんなぁ」
私は圭太の後ろを付いて歩く。
彼は不意に立ち止まると、足元に落ちている何かを拾った。
「何それ。こんなところでも美化委員活動?」
「ゴミじゃないってば。……これシーグラスだろ」
「えー、違うでしょ。砂質がサラサラな場所には、基本的にシーグラスは落ちてないみたいだよ。確かに綺麗ではあるけど」
「光帆はロマンチストじゃないな〜。さっきは『俺と一緒に引っ越す』とか、ファンタジーなこと言ってたのに」圭太が、軽く握った拳を私に向けた。顎先で私の手を指すので、私は右手を差し出した。「これやるよ。友情の証」
「ふ。要らないってば」
「離れても俺たち、ずっと友達だかんな」
「あはは、ちょっとー! 小学生の友情ごっこみたいなのやめてよ」
圭太から手渡されたそれは少し濁った水色のシーグラス……ではなく、おそらくプラスチック片だ。
でも私は、それをなんとなく捨てる気にもなれず、そっとジーパンのポッケにしまった。
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