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ーー転校したい。マジで。
ーー引っ越ししたい。本気で。
新しい町に移り住んで新しい学校に通って新しい友達作って、私は高校生活をやり直したかった。
「何であの人まだ学校来てんの?」「裏切り者のくせに調子乗ってるよね」「私だったらとっくに屋上からダイブしてるかも」
面と向かって本人に言うわけではないけれど、ターゲットに聞かせる故意の陰口は、陰口ではなく悪口で合ってる?
私だって本当は学校になんて行きたくなかった。
でも親に詮索されるのが面倒だから、行かざるを得なかった。
高二に進級したけどクラス替えというものはこの学校には存在しないので、卒業まで私は敵意丸出しのメンバーと一緒だ。
ーー私は罪を犯した。
でも償い方なんてわからないから、さっさとぜんぶ投げ出して私は、今の環境から逃げ出したかった。
こんな狡くて汚い考えを持つ私が美化委員に選ばれるだなんて、ホント冗談みたいで笑える。
だけど余り物を押し付けられたという点では、クラスの余り物となった今の私の境遇にぴったりなのかもしれなかった。
「バケツは俺が持つよ」
今週の美化委員の仕事は、学校近隣の清掃だ。
すべての授業が終わって放課後。私と同じく美化委員になった須藤圭太の隣を私は歩く。彼は火ばさみで地面に落ちているゴミを器用に掴み、次々に金バケツへ投げ入れていった。
担当の先生を先頭にし、各学級二名ずつの美化委員が二列に並ぶ。学校敷地の外周を、私たちはなぞるように周った。まるでお祭りのときに見かける大名行列だ。めでたいことなんて何も無いけれど。
「お疲れ様でした。倉庫に清掃用具を戻した人から上がってください」
担当教員の号令で、本日の活動は終了した。
私は須藤くんからバケツと軍手、火ばさみを貰い受けた。
「山下さん、毎回ごめんね。助かるよ」
「私も道具を戻したらすぐに帰るから、別に大した仕事じゃないよ」
「ホントありがとう。それじゃあ、また明日」
「うん。またね」
学校が終わると須藤くんは、なぜ逃げるように急いで帰宅するのだろう。
私たちは同じ教室で一年間、同じ方向を向いて授業を受けていたのにもかかわらず、お互いのことなんて何も知らなかった。二年の初めに委員会が一緒になっても、何も。
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