864人が本棚に入れています
本棚に追加
「お帰りなさーい!」
マンションの玄関を開けた瞬間、小雪が飛びついて来て、山下は思わず後ずさった。
隣の部屋からゴミ袋を持って出て来た奥さんと目が合い、あらあら、ご馳走様と笑われる。
「ど、どうも…」
会釈をすると、山下は急いで玄関に入ってドアを閉める。
「小雪…。頼むからせめてドアが閉まってからにしてくれ。ほら、そこから下りて来ないでいいから」
えー?と口を尖らせながら、小雪は上り框に戻って両手を広げる。
「ここでいいんでしょ?ほらほら」
満面の笑みで、広げた両手をパタパタさせる。
山下は仕方なく、ジワジワと近付いた。
ギリギリ手が届く所まで来ると、小雪はつま先立ちで山下に抱きついた。
「稜さん、お帰りなさーい!」
「ただいま、小雪」
抱きしめて頬にキスをする。
「ちゃんと留守番してたよ」
「そうか、偉い偉い」
なんだか俺が保育士みたいだな、と、小雪の頭をなでながら山下はふっと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!