小雪の思い込み

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その時、かあさま!と可愛い声がして、二人は振り返る。 「まあ!すみれ」 「え、すみれちゃん?!」 小雪と繋いでいた手を離し、すみれが瑠璃に駆け寄って来た。 「あのね、こゆせんせいが、すみれのなまえのおはな、みにいこうって」 しゃがんだ瑠璃にギューッと抱きついた後、すみれが嬉しそうにそう話す。 「あ、すみれの花ね。えーっと、ほら!あの花よ」 「これ?ちっちゃくてかわいい!」 すみれは興味深そうに、じっと花に顔を近付けている。 「うわー、すみれちゃん、大きくなったなあ」 その後ろ姿に、山下がしみじみと呟く。 「来月で3歳になります」 「そうか!もうそんなになるんだね。結婚式のちょうど1年後、同じ日にすみれちゃんが産まれるなんて、凄いよね。いやー、綺麗な瑠璃ちゃんのウェディングドレス姿、今でも覚えてるよ」 ええ?そんな…と首を振ってから、瑠璃は、すみれ、と娘を呼ぶ。 「すみれ、この人は山下さんっていうの。ずっと前に会ったこともあるのよ」 「やま…た?」 すみれは、たどたどしく繰り返す。 「覚えてないかなー?まだすみれちゃん、小さかったもんね。お兄ちゃんはね、山下 (りょう)っていうんだ。りょうお兄ちゃん…いや、もしや、おじさんか?すみれちゃんから見たら、もはや俺はおじさんになるのか?!」 急に真顔でブツブツと呟き出した山下に、瑠璃はクスッと笑う。 「山下さん、まだまだお兄ちゃんですよ」 「そう?いける?でも、俺もう30だよ?」 「見た目はお兄ちゃんって感じですよ。ね?すみれ」 すみれは、ちょっとはにかみながら山下を見上げる。 「おにいちゃん…?」 「そう!りょうお兄ちゃんだよー!いやー、嬉しいな。お兄ちゃん、すみれちゃんにデレデレだよ」 あはは!と頭に手をやる山下に、瑠璃もすみれと顔を見合わせて笑った。
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