家族

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「ただいまー」 玄関のドアが開く音に続いて、一生の声が聞こえてきた。 「あっ、とうさまだ!」 パジャマ姿で絵を描いていたすみれは、ダイニングテーブルの椅子からトンと降りると、一目散に玄関に向かう。 「とうさま!おかえりなさい!」 満面の笑みで飛びついてくるすみれを抱きしめ、一生の顔は一気にふやける。 「すみれ、ただいま!」 父と娘の熱い抱擁に若干苦笑いしながら、瑠璃も、お帰りなさいと声をかけて鞄を受け取る。 「ただいま、瑠璃」 おでこにキスをしてから、一生は瑠璃にも優しく微笑む。 仕事の疲れなど、もう全く感じない。 一生はすみれを抱き上げ、飛行機のように横向きに抱えると、ブーンとスピードを出しながら部屋に入った。 キャッキャッと声を上げて喜ぶすみれに、しばらく部屋中を飛行機ごっこしてから、ようやく一生はすみれを下ろした。 ふう、とダイニングの椅子に座ると、お疲れ様です、と瑠璃が笑って食事を並べてくれる。 「とうさま、これみて!すみれのおはな」 小さな手に握られたスケッチブックを、一生はどれどれ?と覗き込む。 「これ、すみれが描いたの?可愛く描けてるね!」 「うん!こゆせんせいが、とうさまにもみせてあげてねって」 「そうかー、ありがとう。すみれと同じ名前のお花だね。上手に描けてるね」 一生が頭をなでると、すみれは得意げに笑ってみせた。 「さあ、すみれ。そろそろ寝る時間よ。お父様にお休みなさいしてね」 瑠璃が声をかけると、すみれは、はーい!と返事をする。 「とうさま、おやすみなさい」 「お休み、すみれ」 そう言っておでこにキスすると、すみれはニッコリ笑ってから瑠璃と手を繋いでベッドルームへと向かった。
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