第二章 大丈夫の魔法

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1  短い春休みが終わり、今日からオレは四年生だ。宿題がないのをいいことに春休みを遊び倒してやったら、母ちゃんに「四年生から勉強難しくなるんだからね!」と脅された。そんなの知るかよ、小学生は遊んでナンボだ。それに母ちゃんは毎年同じことを言ってオレを脅す。でも、勉強についていけなくなったら、母ちゃんは容赦なくオレを塾に通わせると言っている。あの母ちゃんなら本当にやりかねないから、やっぱり最低限の勉強だけはしようと思った。意外と小心者のオレだ。  そういえば、今年もあいつと一緒のクラスかな。去年初めて一緒のクラスになり、冬頃から急に仲良くなった中瀬実だ。ある日突然、実から話しかけてきて、友達になった。学年で一番背の高いオレと一番背の低い実。かなりの凹凸コンビだけど、オレは実のことが好きだ。  こういうのをソウシソウアイというのだろうか。実のことを考えながら廊下を歩いていたら、向こうから実が走ってくるのが見えた。走るといっても「廊下は走らない」という決まりをバカ真面目に守る実のことだから、走ってはいけないと知りながらちょこちょこ走っているという、おかしな格好だ。 「実、何変な走り方してんだよ!」 「剛志くん! 僕たちまた一緒のクラスだよ!」 「まじで? やったな!」  さっき思ったソウシソウアイのことを実に話したら、「それを言うなら以心伝心だよ」と教えてくれた。相変わらず、実は言葉をたくさん知っている。それに、オレに言葉を教えてくれるのに全然嫌味じゃない。実のそういうところ、見習いたいと思っている。  オレはまた一年間一緒のクラスになった実と、連れ立って新しい教室に入った。
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