第二章 大丈夫の魔法

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4  実はオレと遊ぶようになってどんどん元気になっていった、となればめでたしめでたしだけど、残念ながらそうではなかった。相変わらず月に何日かは熱を出して学校を休む。三年生の三学期には、インフルエンザをこじらせて肺炎にかかってしまい、十日間ほど入院してしまった。これもばあちゃんの影響なのか、オレは千羽鶴を折ってお見舞いにいこうと思った。でも、母ちゃんに「インフルエンザで千羽鶴なんて、逆に迷惑だよ!」と一蹴された。「不器用なアンタのことだから、千羽折る前に実くん、退院しちゃうよ」とまで言われた。さすが母ちゃん、ごもっとも。  仲良くなかった頃は、実が学校に来ようが休もうが特に何も感じなかった。でも、今は実のいない学校は寂しい。とはいっても、オレたちは女子のようにいつもべったりとくっついて過ごしているわけじゃない。実の体調がよくない時は、オレだけ運動場に出たりしていた。  そんなさっぱりとした関係だけど、実が一緒に図書館に行こうとしつこく誘ってきたことがあった。学校を休みがちなくせに勉強のできる実にしては珍しく、図書館のじろうくんがどうのこうのとわけのわからない理由でオレを誘ったのだ。読書が大嫌いなオレは、もちろん嫌だと突っぱねた。悲しそうな実の顔を見てオレも心は痛んだけど、嫌なものは嫌だから仕方がない。実もそれ以上はしつこく誘ってこなかった。
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