15年前 初めてだらけのカラオケで

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 難病は、原因が分からなくて、抜本的な治療ができないから、難病と呼ばれている。  体に何が(・・)起きているかは解明されていても、何故(・・)起きているか分からない。  だから、対処療法しか――延命治療しかできない。  病院に通っても、完全に良くなることはない。  一つの症状を改善しても、他の症状がひどくなる。  体調に波があって、良い日と悪い日がある。  だけど、全体的には確実に悪くなっていく。  どれだけ辛い努力をしても報われることはなくて、よりよい最期を目指すことしかできない。  それが『難病と付き合う』ということだ。  そんな現実が嫌いだ。  だから、歌を歌いに来た。 「じゃあ、この曲を歌おうかな」  ワタシは機器を操作して、一つの曲を選んだ。  今決めたようなフリをしたけど、実は来店する前から決めていた。
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