15年前 初めてだらけのカラオケで

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 ♪~~~♪~~~♪~~~    伴奏が流れる。  ワタシは目を閉じて、歌い出す。  瞬間、何人もの顔が脳裏に浮かんだ。  夫が病気になって、ワタシがアーティストを引退した後に出会った人達。    ワタシの境遇を知って同情してきたヤツら。  アイツらに、ワタシの歌声を聞かせてやりたい。  これが不幸な歌声に聞こえるのか。  これが悲痛な叫びに聞こえるのか。  これが強がりだと決めつけるのか。  病気が悪化して、自分一人でトイレにも行けなくなって、オムツを履く必要が出てきた頃。  彼自身も言っていた。 【オレなんて、捨てられても仕方がない】   ガチで腹が立つ。  ヘソで沸いたアチアチのお茶を、頭からぶっかけてやりたい。  同情するなら、彼の病気を治してくれ。  彼の苦しみを和らげてくれ。  彼を、ワタシから奪わないで。
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