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あったのは『親の言う通りになりたくない』という強がりな自立心だけだった。
とても幼稚な考えだ。
だけど当時のワタシは、それが何よりも大事で、一番に優先してしまっていた。
「もういい加減にしろ! なんでそんなに我儘なんだっ!」
「こっちのセリフだよ! お前らなんて親じゃないっ!」
「もうやめてっ!」
結果、両親と大喧嘩をした。
初めて家出をして、夜の街にたどり着いた。
行く場所も居場所もなくて、ただ下を向いて歩き続けていた。
「ねえ、キミ、暗い顔してるね。話だけでも聞くよ?」
そう声を掛けてきたのは、金髪の好青年だった。
趣味の悪いピアスとネックレスに、韓国アイドルみたいな髪型。
いかにも〝遊び人〟といった格好をしていた。
一般的な感性を持つ人なら『ヤバイ』と思う男だったのだけど――
(ああ、カッコイイなぁ。色っぽくて素敵だなぁ)
当時のワタシは正気じゃなかった。
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