15年前 初めてだらけのカラオケで

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 あったのは『親の言う通りになりたくない』という強がりな自立心だけだった。  とても幼稚な考えだ。  だけど当時のワタシは、それが何よりも大事で、一番に優先してしまっていた。 「もういい加減にしろ! なんでそんなに我儘なんだっ!」 「こっちのセリフだよ! お前らなんて親じゃないっ!」 「もうやめてっ!」  結果、両親と大喧嘩をした。  初めて家出をして、夜の街にたどり着いた。  行く場所も居場所もなくて、ただ下を向いて歩き続けていた。 「ねえ、キミ、暗い顔してるね。話だけでも聞くよ?」  そう声を掛けてきたのは、金髪の好青年だった。  趣味の悪いピアスとネックレスに、韓国アイドルみたいな髪型。  いかにも〝遊び人〟といった格好をしていた。  一般的な感性を持つ人なら『ヤバイ』と思う男だったのだけど―― (ああ、カッコイイなぁ。色っぽくて素敵だなぁ)  当時のワタシは正気じゃなかった。
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