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(ワタシだったら、もっとうまく歌える気がする)
そして、実際に歌ってみた。
ちょっとライブハウスのマイクを借りて。
実際に、ワタシには才能があった。
歌い終わった瞬間、彼はワタシの肩を強く掴んだ。
「お前、サイコーだよ!!!」
今思えば、ワタシはこの時、本気で惚れたんだと思う。
年下の天才を、純粋に褒めて、無邪気な笑顔を向けてくれる男。
普通の人よりも純粋で、子供っぽいだけの男。
厳格な親が嫌いなワタシにとって、彼がどれだけ魅力的に映ったことか。
まあ、数年後、ワタシがプロデビューする頃には、浮気癖のあるヒモになってたんだけど。
それでも彼を捨てなかったのは、彼が『歌の原点』だったからだ。
彼がワタシの傍を離れたら、歌を歌えなくなってしまう。
そんな予感がしていたからだ。
シンガーソングライターでいる限り、彼は必ず必要な存在だった。
でも、たまに思う。
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