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キョロキョロと。
周囲を見渡して、やっと状況を把握できた。
(あー。そうだ。カラオケボックスに来たんだった)
どうやら、部屋に入る前に意識が少し飛んでいたみたいだ。
最近疲れているせいで、そんなことが増えてきている。
「本当に大丈夫か?」
「ダイジョーブダイジョーブ」
ワタシは車椅子を押して、カラオケボックスに入った。
すぐに車椅子から夫をおろして、ソファーに座らせる。
「いやー。カラオケなんて久しぶりだなー」
ここは夫と初めて出会った時と、同じ部屋だ。
様子からして、夫はそのことに気付いていないだろう。
かなりの鈍感野郎だから、想定の範囲内だ。
そもそも、どうやって出会ったか覚えているか怪しいし。
彼は記念日を全く覚えないし、自分から祝うことはしない。
それぐらいにはテキトーでヒョウキンだ。
だけど『覚えていない』と思うのには、もう一つ理由がある。
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